第4話 入部しなくちゃいけなくて2
「晴彦、おはよー」
「おはよう龍馬」
相変わらず海斗はぐっすり眠っている。
「入部届は書いてきたの?」
「書いた」
「歴史研究学部?」
「そう」
「隣の席の子に一目惚れしちゃったから?」
「うん……いやちげーよ!」
流れに乗せられて「うん」と言いそうになった。まぁ言ってしまったが。
「おはよう。晴彦くんと龍馬くん朝から元気だね」
「世良さん。おはよー。元気もりもりだよー」
龍馬は相変わらず調子がいい。俺は凛以外の女の子に冗談を言う勇気はない。
「おはよ」
「そうだ。晴彦が歴史研究学部に入るって!」
「本当に!やったー!!」
世良さんが喜んでくれている。嬉しい。てか、俺に言わせろよ。
「私、まだ入部届出してないから一緒に出しに行かない?」
「うん。いいよ」
「晴彦よかったじゃん」
龍馬がニヤニヤしてこちらを見てくる。気持ち悪い。
「今日の放課後は空いてる?」
「空いてるよ」
「じゃあ今日の放課後、入部届出しに行こう」
「了解」
放課後になり、俺と世良さんは入部届を出しに歴史研究学部の部室まで向かう。モテるテクニックとして女の子のスピードに合わせて歩く。これもネットの知識だ。
「晴彦くんが入部してくれてよかったよ。一年生が1人だったら寂しいもん」
「あー。確かに。心細いよな」
「そうなんだよ。初めてなのに全てが1人になるし」
「友達とか誘わなかったの?」
「中学が田舎でさ。鳳高校を受けたのが私だけだったんだよね。だからまだ友達がいないの」
「そうだったんだ」
世良さんは明るいしこの高校で既に友達何人も出来てると思ってた。
「晴彦くんは中学から一緒の人いるの?」
「いるよ。他のクラスだけど女の子だし明るいやつだから仲良くなれるんじゃないかな?」
「そうなの!仲良くなりたい!」
「分かった。凛に言っとくよ」
どうせ凛のやつ今日も家に来るんだろう。
「ありがとう!凛ちゃんって言うんだね」
「うん。真島凛って言うんだ」
「真島凛ちゃんかー。おしゃべりするの楽しみ!」
世良さんは意外と積極的な子だと言うことが分かった。
教室の前に行くと「歴史研究学部」の張り紙が貼ってあった。おそらくここが部室なのだろう。
「ふぅー。緊張するね」
世良さんが緊張してる。ここは共感しながら男として引っ張っていくのが理想だろう。
「そうだね。やっぱり初顔合わせは緊張するね」
よしっ。共感はいれた。次は引っ張っていく。
「じゃあ入ろうか。失礼しま……」
俺は扉を半分開けたところですぐに閉めた。そして、この部活はやばいと感じる。なぜか。扉を開けたその先には女の子がムチで打たれていたのだ。
「……ちょっとこの部活に入るのは考えない?」
えっ。歴史研究学部ってこんな部活なの?それともSMの歴史を研究してるとか?ともあれ、今部室に入るのはまずい。てか、こんなことしてる部活に入るのはまずくないか?
「えっ。なんで?」
「いや、ちょっと……」
世良さんには見えてなかったらしい。扉を開けるのが半分だけで良かった。あんな光景は高校生になりたての女の子にとっては刺激的すぎる。
「いいから入ろうよ」
「あっ。ちょっと!」
世良さんは俺の脇をくぐり扉を開ける。
「失礼します」
扉を開けるとさっきの光景は無かった。ただ、2人とも息が乱れていて、1人は「開けるな」と書いてあるボックスの目の前にいた。俺が来て慌てて鞭を隠したのであろう。
「うちの部室に何か用ですか?」
鞭を打っていた明るい茶髪でショートカットの子が答える。まだ少し息が乱れているが隠し通すつもりだろう。
「あの。私たち歴史研究学部に入りたくて入部届を持って参りました!」
「本当に!?やったー!優奈入部希望者だよ!」
「聞いてたわ」
鞭で打たれていた黒髪ショートカット の眼鏡を掛けている先輩が答える。優奈さんと言うらしいが、どちらかと言うとこの先輩の方がSっぽいイメージだ。
「それよりもそこの男子。ちょっと来なさい」
「は、はい」
俺は優奈先輩に教室の隅っこに連れていかれる。
絶対に怒られる。入部初日からこんな事になるなんて最悪だ。
「あれは見なかった事にしなさい。絶対に他の人には言っちゃダメよ」
「はい。絶対に言いません」
「言ったらこの部活にはいられないと思いなさい」
そう言うと優奈先輩は世良さんもう1人の先輩のところに去っていった。
「そこの男の子もこっちおいで。自己紹介するよ」
助かった。とりあえずあのことを言わなければ世良さんと一緒の部活でいれる。
「まずは私ね。三年生で部長をやってる楠華です。これからよろしくね」
この部長ほんわかしてて可愛いけど鞭を打ってたし怖いんだろうな。
「私は2年の白金優奈よ」
すごく素っ気ない自己紹介だ。この人がMなんて間違ってる。
俺はじぃーと見ていると
「何見てるのよ」
「いや、なんでもありません!」
怒られた。
「優奈ちゃんには副部長をやってもらってるの。ツンツンしてるけどいい子だから仲良くしてあげてね?」
「ちょっと部長!私はツンツンなんてしてません!」
それを見て部長と世良さんはクスッと笑う。
「じゃあ次は一年生に自己紹介してもらおうかな?」
「あっはい!世良雫と申します!よろしくお願いします!」
「雫ちゃんね。そんな固くならなくていいよ」
「す、すみません」
「謝らなくていいから」
「はい。すみません」
部長はまたクスッと笑う。
「次は男の子!」
「はい。時枝晴彦です。よろしくお願いします」
「よろしく。時枝くん」
「よろしくお願いします」
今度は白金先輩が俺のことをめっちゃ見てるよ。楠先輩どうにかしてください。
「本当はあと1人二年生がいるんだけど、今日は休みだからまた明日、顧問の先生も来るらしいから一緒に自己紹介してもらうね」
「はい。わかりました」
俺は軽くうなずいた。もう1人はまともな人でいてほしい。
「そういえば晴彦くんはなんで扉開けたあと、部活に入るのやめようと思ったの?」
「いや、それはその……」
先輩たちの鋭い視線が俺を突き刺す。
「ちょうどその時トイレ行きたくなってさ。別にやめようと思ったわけじゃないんだ」
酷い言い訳だ。
「そうなんだ」
納得するんかい!まぁいいや。
こうして俺は歴史研究学部に入る事になった。
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部活を選ぶ時、自分もこんなイベントが起きて欲しかった……。
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