どこまで行ってもかごの中

 俺は夢でも見ているのか?いや、きっとそうに違いない。

 そんなことを思ってみたものの身体には先ほどまで歩いていた疲労感が溜まっているのがわかる。

 不可解なことが立て続けに起こっている。どんな馬鹿でもさすがにわかる。

 ここは異常だ。

 確かに俺は死のうとしていたし、今も死にたいとは思っている。

 だが今はそれよりもやりたいことができてしまった。

 こんな不可解な現象へと俺を誘ったあのクソガキを一発殴ってやる。今はそれが頭の中を占め、原動力となっていた。おかげでこの現象に対峙しても恐怖はあまり感じられない。

 同じことをやってもまた戻ってきてしまうのだろうか。その前に先ほどの人に色々確認したほうがいいかもしれない。


 先ほどの人はまだ同じ場所で魚を釣っていた。

 「あれ?さっきの人じゃねぇか。どうしたんだ?」

 「いくつか質問したいことがございまして」

 「質問?俺別に頭よくねぇから答えられるか分からんぞ」

 「わかる範囲で構いません」

 そういっていくつか質問し

 ・ここは『去鳥村さるとり』という村付近である

 ・その村では今日、神様に捧げる祭りが行われる

 ・村付近から出るものはいないため他の場所がどうなっているか分からない

 ・年号という概念がなく、いつの時代か分からない

 が分かった。

 そして会話している中で現代の日本文法が伝わりすぎていることから違和感を覚える。もしかしたらここは創られた場所で、あの自称神様クソガキは俺に何かをさせたがっているのではないか。

 なんだかゲームのようだなと思った。ゲームといってもホラーや命を懸けた脱出等の、とても主人公にはなりたくないような類ではあるが。

 

 帰る場所がないことを話すと「んなら今日はおらん家に泊まっていきな」とのことで言葉に甘えることにした。山を歩き回ったり、よく分からない状況に置かれて疲れがひどく、あまり考える余裕がない。どうするかは明日考えよう。

 

 「そういえば祭りってどのようなものなんですか?」

 「おらの村に神様がきてよぉ。神様が来てから作物は育つは、台風もこねぇはでありがてぇことがいっぺぇおこってんだよ。だもんで神様にみんなで貢物して感謝しようって食べ物さたくさんこしらえて宴をするんだよ」

 話を聞くに豊穣の神様のようなものがいるらしい。しかも実在する形で。

 「しかし神様が来たというのはどういう?天からきたとかですか?」

 「んにゃ、そういうわけじゃねぇよ。家がないっつぅおみなごが来てな。うちの村はなかなか作物が育たなくて鳥すらも来ねぇから『去鳥村』だなんて呼ばれてたんだげど、その子が来てから作物がすくすく育っていって台風もこねぇしみんな病気にもならねぇ。んで、きっとその子は神様にちげぇねぇって崇められてるんだ」

 「では実際には神様ではないんですね」

 「その子は『私は神様なんかじゃないです』って言ってるけどな。それでも村に幸福をもたらしてくれたんだ。おらたちにとったらありがてぇ神様さ」

 どうやら勝手に祭られているようだ。しかしその神様をと呼ぶということはフレンドリーな関係にあるということだろう。もしかしたら祭り自体も村を活気づけるものかもしれない。

 神様がいると聞いたからもしかしたら自称神様クソガキがいるのかもしれないと思ったが話を聞くに違うのだろう。


 そんな会話をしているうちに村についた。

 

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神様はきまぐれ こめ おこめ @kosihikari3229

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