ボーン・ナイン

「ああ? 何固まってんだ、ヒト」

 鵜鯉と少女が写った写真を手に呆然としている一葉に、桜丘が不審そうな声をかける。

「……いや、少しだけ、繋がったような気がして」

「み深なこと言ってんじゃねえよ、俺はそういうの察せないタイプって知ってんだろ?」

 桜丘は自身の性質を理解していた。それは常に隣にいた直喰が、彼の長所も欠点もすぐ口にしていたためだ。客観的な視点を持ち合わせない桜丘は、直喰という視点を元に自身を知れていたのだ。

 そういう部分でも、桜丘にとって直喰簪という人間がどれだけ大きな存在なのかを計り知れる。

「この鵜鯉じいさんの隣にいるのが、愛中を襲った女です。そして話を聞く限り、おそらく直喰先輩の件も」

「あの髪の毛の正体がこいつってわけか」

 一葉は、髪の毛、という響きに覚えはなかった。彼は未髪と直接対峙したわけではないからだ。それでも、来山から伝え聞いた愛中の証言などと合わせて考えればなんとなくの予想はついた。

「……ゴミ山に、行きましょう」

「あ?」

「三番街交番が半壊したこのタイミングで鵜鯉じいさんを誘拐。やつらは、警察以外の人間を先に潰すつもりなのかもしれません。もしそうなのだとしたら、次にターゲットになるのはゴミ山に住みついている二人組です」

 もっとも、鵜鯉の誘拐に関してはこの写真からも分かる通り、危害を加えようという動機からではないのだろうが。それを踏まえて考えても、鵜鯉白春の誘拐はこちら側にとって貴重な情報源の喪失になる。

 おそらく骨奪いを頭とした悪漢共は、その他の勢力を根絶やしにした上で、残った三番街交番の人間を襲おうとしているのかもしれない。

 迅速な増援が望めない今、先方の思い通りにことを進められるわけにはいかない。

 あのゴミ山の二人は、三番街において地下交番に並ぶ驚異となるだろう。だからこそ、こちらとしてはみすみす潰されるわけにはいかない。

「少し急ぎます」

「あ? ちょっと待てやヒト!」

 桜丘の同意も待たず、一葉は走り出した。

 あと少し早ければ。もしも自分がいたら。

 そんな思いはもうごめんだ。

 一宮一葉、地下街のヒーローはもう二度と、この街を穢す連中に先を越されない。

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フール・ビビッド・アンモラル 日々曖昧 @hibi_aimai

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