わたしを救ってくれたのは、命無き彼女だった。
時は西暦2050年。
人が培養装置から生まれ、高度な思考を行うことのできる人間型ロボット──いわゆるヒューマノイドと共生する時代。
医療技術、特に再生医療は、三十年前に比べ飛躍的な進歩を遂げていた。あらゆる難病は完治し、感染症は根絶され、失った四肢を復元することすら容易にできるようになった。
その病的なまでの技術革新によって、誰もが幸せに、安全に暮らすことのできる「完璧な社会」の実現が真剣に目指されるようになった日本。
――これはその闇に落ちかけた一人の少女と、彼女を救おうと運命に抗った、あるヒューマノイドの物語。