フランチェスカが最高に可愛い、そしてアンジローの成長物語でもある

『見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る』を最後まで読了いたしましたので感想を更新します。
※ちょっとネタバレもあるかもしれませんが極力ボカして書きます。

正直、悪い所は見当たりませんでした。最後までフランチェスカの世界に引き込まれながら本当にたのしく読ませて頂きました。
なによりも素晴らしいのは作者の知識量。
聖書の小項目を引用したり、世界中の情景描写を丁寧に描く様は、小説は知識が物を言うということを全面的に叩きつけてきてくる実力があります。おそらく作者は海外旅をよくしているか、それに準ずる経験や知識を取り入れるのが趣味なのだと推察します。
全世界をフランチェスカが巡り、様々な出会いをする描写は、現地をしらない自分でも容易にイメージしやすく、ワクワクさせるいものでした。
しかも、本筋以外の各ストーリーが短編のようになっているのですが、それぞれたちゃんとテーマが決まっており、群像劇として織りなされる出会いと別れのストーリーは胸に来るものがありました。
群像劇というだけあり、多くの登場人物がいますが物語のテーマに沿った形でそれぞれのキャラを丁寧に描写しており、思い出深い物語へと仕上がっています。

なによりこの小説。ひとえにアンジローが主役としてラブコメとしてだけ収まるのではなく、タイトルにもあるようにフランチェスカこそが主役であり、自分の為に祈り我が道を行く物語でもあります。
そのため、フランチェスカは頻繁に一人で世界中へ飛び回ります。それはアンジローとフランチェスカのラブコメ糖質過多を求めて来た人には人には少し物足りないと中盤は思うでしょう。
しかし、それはフランチェスカがいままでどう成長してきたのか、そしてこれから成長していくのかを読者へ伝えるために必要なフェーズであり、後半は色々あってアンジローの成長物語として一気にシフトします。
そういった流れの結果として、読み終えた後の読了感はとても心地の良いものでした。

是非とも多くの人に読んでもらいたいと思っています。
埋もれるのはあまりに惜しい。

改めまして、フランチェスカに幸あれ!!

追伸:
物語内では語られなかったことの顛末。最後のフランチェスカが許された話や、アンジロー達との今後など、もし作者さんが後日談やサイドストーリーを書く気があれば気になります!

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