第298話 転生の義眼

「……ったく、こりゃあ、当分、戦えそうにないな」


 そう言って、ライカはドカッと近くにあった椅子に座った。


「……その……ごめん」


「だから、謝るなっての。実際、俺はお前を殺すつもりで戦ってたんだぞ? それなのに、こうやって助けられた……そっちの方が腹たってるんだけどな」


 そう言って、ライカはミラのことを睨む。しかし、ミラは笑っているだけで動じない。


「でも、実際、君がいないと、魔王の城まで行けないだろう? それに、君は知っているのだろう? 魔王がどういう存在か」


 ミラがそう言うと、ライカは面倒くさそうに髪の毛をガシガシとかきむしる。それから、面倒くさそうな表情で俺を見る。


「……もう一度確認するが、アキヤはもうお前の中にはいないんだよな?」


「え、えぇ……前に言ったように、俺がこの世界に来る前の地底湖に、腕輪を投げ入れたので……」


 俺がそう言うとライカは少し考え込んでいるようだった。


「なるほど……じゃあ、腕輪は破壊しなかったんだな?」


「え? まぁ……そうですけど……」


 考えてみれば、地底湖に放り投げるべきではなかったのかもしれない。しかし、あの腕輪はどうやっても破壊することはできなかったし……。


「……いや、俺の杞憂だろう。気にしないでくれ。それに、あの腕輪がなくても、お前は十分に強いしな」


「そんな……俺じゃなくて、レイリアが……」


 俺は思わずベッドの傍らにおいてあった剣を見てしまった。俺は結局、アキヤと決別したというのに、レイリアに頼ってしまった。最も、あの時点では選択肢は他になかったわけで……。


「いや、アレはお前の力だ。少なくとも、お前があの剣の力を使いこなしていた。あの剣の正体がなんであれ、お前が強かったんだ」


 ライカは真剣な顔で俺にそう言う。そう言われるとなんとなく恥ずかしくなってしまった。


「……まぁ、とにかく、魔王の城の場所までは案内する。だが、内部まではついていけない。この身体だしな。その案内も、もう少し回復してからの話だ」


「……あの、俺のせいで怪我をしてしまったのに、悪いんですが……前に言ったように、俺たちはアッシュを探しているんです」


「あー……そうだったな。う~ん……そうなると、少し急いだほうがいいかもしれないな」


「……どういうことです?」


「あのルミスとマギナのことだ。新しいおもちゃが手に入ったら、壊れるまで遊ぶだろうしな」


「え……どういうことです? ……というか、ライカ。そもそも、なんで俺に襲いかかってきたんです? それに、アナタはマギナとルミスのことを……」


「あー! わかった! 一気に質問するな! 全部答えるから」


 そう言うとライカはいきなり眼帯を外すように手をかける。


「……お前がしていたあの腕輪、『転生の腕輪』ってのは知ってたよな?」


「え……えぇ。まぁ、それはアキヤの知識の中で知っていただけですけど……」


「俺も持っているんだよ。お前が持っていた腕輪と同じようなものを」


 そう言って、ライカは眼帯を外す。その下には……まるで宝石のように七色に輝く義眼が嵌められていた。


「これは『転生の義眼」……つまり、俺はお前と同じ、転生した人間、ってことだ」

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追放された俺が辿り着いたのは、追放者だらけのパーティでした。 味噌わさび @NNMM

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