第297話 冒険の続きのために
「やぁ、気分はどう?」
と、次にやってきたのは、ミラだった。
「ミラ……え、えぇ……なんとか……」
ミラはニコニコしながら俺の方に近付いてくる。こういうときは大抵、ミラが怒っている時なのだ。俺だって長い付き合いなのだから、それくらいわかる。
「ウチが怒っているってことは、わかっているみたいだね」
俺がそう思っていると、見透かされているという感じでミラはそう言った。
「……すいません」
俺が謝ると、ミラはわざとらしく肩をすくめてから、椅子に腰掛ける。
「まぁ……別に君が無理をする人間だということも、十分理解していたつもりだけど……今回は正直、危なかったね」
「そう……なのですか?」
すると、ミラが明らかに不機嫌そうな顔で俺のことを睨む。
「部屋の外で聞いてたけど、包帯の巻き方……確かに、包帯を巻いたのはリアだよ。だけど……君に寝ないで治癒魔法をかけ続けたのは誰だと思っているわけ?」
……流石に俺だって馬鹿じゃない。自分が無事であるのは誰のおかげか……このパーティで誰が死の淵から救うことができる力を持っているのかは理解している。
「……メルは?」
「寝ていると。魔力も殆ど使い果たしてね」
「そう……ですか」
その時になって、俺はようやく、自分がどれだけパーティに心配をかけ、迷惑をかけたのかを理解した。
「……ごめんなさい」
思わず謝るしかなかった。ミラは鋭い目つきで俺のことを見ている。
「謝る必要ないよ。結果的に誰も死ななかかった。それでいいじゃないか」
「……それでも、俺は……」
「別にソイツの言う通りだろ。クヨクヨしてんなよ」
その聞き覚えのある声で俺はそちらに顔を向けてしまう。
「よぉ。クソ野郎。ようやく目が覚めたみたいだな」
そこにいたのは、松葉杖をついて、俺と同様に包帯を体中に巻いたライカだった。
「なんで……」
「なんで? そりゃあ、死に損なったからに決まってんだろ。もっとも、俺はマジで死ぬ一歩手前だったみたいだけどな」
俺は思わずミラの方を見てしまう。メルは意味深に微笑んでいる。
「まさか……ライカの治療も、メルが?」
「当然。ウチやリアじゃできないからね。メルは完全に怒っていたが、ウチが半ば無理やりに治療してもらったんだよ」
「それは……なぜ?」
俺がそう言うとミラがいたずらっぽくウィンクする。
こういうとき、ミラは大抵ろくでもないことを考えているということも、俺は長い付き合いで理解している。
「それは、当然、彼女が冒険の続きに役立ちそうだったからだよ。彼女には今度こそ、魔王の城までの道案内をしてもらうわけさ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます