平和への祈り

さあ歌え

 喜びの歌を

さあ歌え

 平和への賛美歌を


あの日

 幾万もの人々が倒れ

あの日

 幾万もの人々が苦しんだ

黒い雲が大空を覆い

黒い雨が人々の心を覆った


その危うさを知り

 研究した人々

自国の正義を守る為に

 爆撃機へと乗った人

実際にそれを受け

 燔祭を身に浴びた人々

作り出された廃墟を歩み

 原子野を調査した人々

平和の祈りを捧げる為に

 この地を訪れた人々


多くの人々が関わり

 多くの犠牲者が連なって

 還暦を迎える

 祈りの地が

  還暦を迎える


しかし

祈りの地は平和でも

 海を越えれば争いがある

この青空の向こうには

 戦火で朱に染まる空がある

 戦渦で雲も乱れる空がある

 戦禍で命の消える空がある


我々の平和は何なのか

 名も無き人々を殺すものなのか

我々の平和は何なのか

 見知らぬ人々を踏みにじるのか


時を経て

 記憶の底の

  鐘が鳴る

 平和の中の

  人は知らずに  心臓の

           送る血潮に

            混ざりけり

           平和の民の

死の灰を        刻印は未だ

 浴びたこの地に

  生まれけり

 唯一無二の

  歴史の中で   帝国の

           正義の為に

            我が生は

           平和の鐘を

足元の         鳴らす身となる

 アスファルトにも

  命あり

 平和を祈る    

  歴史と共に   今も尚

           病魔がそこに

            忍び寄る

           喜寿も米寿も

八月の         知らぬ顔して

 あの暑き日の

  思い出は

 資料となりし

  フイルムの中  今一度

           遠き砂漠に

            子供らは

           あの暑き日の

            灰を浴びけり


     還暦を

      迎え今また

       平和への

      軍靴の音が

       戦地へ向かう


     離れても

      空の青さは

       同じ色

      平和を思う

       心と同じ


さあ

 子供らよ

さあ

 大人達よ

さあ

 老人達よ

さあ

 少年達よ

さあ

 私達よ


今こそ歌え

平和を祈り

ここまで歩んだ

歴史と共に

今こそ断とう

 軍靴の響き

今こそ剥ごう

 軍旗の布を

平和の旗に換える為

 白い旗さえ

  高貴な色か

今こそ祈れ

 世界と共に


客はすっかり待ちわびて

 今にもそれは

  はじけそう

かの崇高な調をここに

祈りという名の合唱曲を

世界という名の舞台の上で

 心を繋ぎ

 手を繋ぎ

 夢を繋いで

溢れんばかりの

平和を望む

祈りをここで


さあ

 共に歌おう


全てはあの日に始まって

 今なお続いてる

為政者達は市民を知らず

市民も世界の名を知らず

為政者達は戦地を知らず

 その惨劇は夢のもの

世界市民も戦地を知らず

 その惨劇は夢のもの

一部の人を除いては

その場の人を除いては

 その惨劇は夢のもの

世界市民に一部とされた

 人を除いて夢のもの

世界市民が決め付けた

 ルールの中では夢のもの

  夢の中では夢のもの


夢から醒める時が来た

火というものを手に入れて

陽炎を見たその日から

共に歩んできた夢と

終に別れる時が来た


風が吹いても醒めはせず

雨が降っても醒めもせず

光が降っても醒めはせず

何があっても醒めはせぬ

この人間の見る夢を

今こそ覚ます時が来た

夢から醒める時が来た


さあ歌え

 喜びの歌を

さあ歌え

 平和への祈りを

今こそこの

 平和の地

  長崎という町で

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連作「幼子の祈り」 鶴崎 和明(つるさき かずあき) @Kazuaki_Tsuru

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