第22話
海には、人があまり来なくなった。仕方がない、あんな海だもの。目の前に、広がる海には工場から、出てきたのだと思われる、消えることない、クリーム色の泡がいくつか浮いていた。体に無害な物かどうかなんてわからなかったけれど、海にあってしかるべきものだとは思えなかった。
手にゴム手袋をはめ、水中ゴーグルをかけた状態でよどんだ海をかき分けていった。海が一気に深くなり、海底をけって弾みながらその泡に近づいた。泡は塊ごと手に持っていたビニール袋に入っていった。足元をすくわれそうになりながら、皮必死に、海面に顔を出し、海の流れにさからって泡に突っ込んでいった。
急に、おなかのあたりが締め付けられて、私はじたばたと両腕、両足を動かした。顔がずっと海面から出ていることに気が付いて、背後の人影を見るとおじさんが私を抱きかかえて立っていた。
海の家 タケノコ @nanntyatte
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