第21話
シャッターを開けたのは自分と同い年くらいの、男の子だった。
「なんで泣いているの?」男の子は私を見るなりそう聞いた。
「僕の番が回ってくるまで、いろんな人がきたでしょう。みんなきみの話をきいてくれたでしょう。なんで泣いているの」彼は、とてもやさしく、泣いている私を邪険に扱わずにそう聞いてくれた。
「おじさんが、いなくなったんだ。ここに来た時に、ここのお店の店番をしてくれていた人」そう私は、その男の子に言った。
「そうなんだ。でも、君にはあのおじさんは特に面識のない、ただ数日いっしょに過ごしてくれた人っていうだけでしょう。なんで、そんなに泣くことがあるのさ」と男の子は、どうってことないよとでもいうようにそう言った。
「私は、家出をしたんじゃないの。かえる家がなくなったの。親が死んだ。身寄りもなくて、意味の分からない大人たちの話し合いから逃げてここに来たの。また、私は一人になる」そう言っていると、止まりかけていた涙が再びこらえられなくなってあふれてきた。
「泣いていたってしょうがないじゃないじゃないか」
「不安な時に、泣かなくていつ泣くの? 悲しいことを忘れるために、なくんでしょう?」
「泣いて忘れたって、明日の朝になったら思い出してまた君は泣くんだ。おじさんまで忘れられたらそんなことはないんだろうけど。
そんなことに涙を使うなよ。
ここは人を忘れる場所じゃない。ここは大切な人を思い出す場所だ」
「思い出したって、帰ってこない、私の大切な人は誰も帰ってこない」
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