どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ~デミヒューマンとのファーストコンタクト~

ボケ猫

第1話 有翼人:デミヒューマンとのファーストコンタクト







<帝都王宮>


アニム王の応接室。

まだ連合国との戦争は始まっていない。

帝都に学校が設置される少し前。


邪神教団の足取りをなどを調査させているが、一向につかめる気配はない。

椅子に深く座り、いろいろ考えているとドアをノックする音がする。

「どうぞ」

アニム王が声をかけると、ドアが開かれる。

係の女の人が報告をする。

「王様、面会を求めているものがいるのですが、いかがいたしましょう」

アニム王は少し首をかしげた。


おかしい。

面会にはそれほどの障壁を設定してなかったはずだが、どうしたのだろう?

係の女の人の仕草を見てそう思った。

「どなたが来られているのですか?」

アニム王が聞く。

「・・それが、私もお目にかかるのが初めての方でして、どうしたものかと迷っておりましたが、どうしても面会したいと言っておりまして・・」

係の女の人の歯切れが悪い。


アニム王は少し迷ったが、通すように指示。

すぐに面会したいというものが現れた。

「こちらです」

係の女の人の案内されて、応接室へ入って来た。

「失礼します」

透き通るような声を伴って入ってくる。

その声の後ろでは、係の女の人がドアを閉めて出て行った。

「王様、面会を受け入れてくれてありがとうございます。 私はデミヒューマンのラミエルと申します」

そう挨拶をしてアニム王を見つめる。

アニム王はその人を見つめて少し考えているようだった。

・・・

「あなたは、この星の方ですか?」

アニム王は問う。

「はい。 この星の住人であるのは間違いありません。 しかし、地上の人たちとは違います」

透き通るような声でラミエルは話す。

アニム王はその言葉を聞きながら微笑む。

「そのデミヒューマンの方が、どのようなご用件でしょうか」

「はい。 我々有翼人は長い間、この街のように雲をカムフラージュにして暮らしておりました・・・」

ラミエルはそう話始める。

・・・・

・・

聞けば、自分たちの街がいつ出来上がったのかわからないという。

しかし、随分長い時間が経過したのは間違いない。

初めのうちは地上とも行き来をしていたそうだ。

そのうちに地上に人の文明が誕生する。

人とも仲良く交流をしていたが、人が悪知恵を使い手に負えなくなってくる。

そのうち交流もなくなってきたという。

そのまま空に街を浮かべ、雲でカムフラージュをしながら生活をしていた。

魔法も少しなら使える。

生活魔法程度だ。


昔に世界を水浸しにしたことがあった。

なるほど人は少なくなるが、他の生命体にも迷惑をかける。

私たちだけの星ではない。

とりあえず見守ることだけにした。

地上では人が機械文明を発達させて、星の環境が乱れてきた。

強力な兵器も開発をするようになった。

ますます人との距離が離れてくる。

どうすればいいのか迷っていた。

そんな時、いきなり世界に魔素が溢れだし、気持ちよく循環するようになった。

魔法の力も強くなってくる。


原因を調査していると、この帝都の存在を知る。

どうやら異世界から転移してきたことがわかる。

そして、調べれば調べるほど全くの他人とも思えない。

どこか親近感があるという。

そこで代表が選ばれて、ラミエルが来た次第だ。


「なるほど・・私のいた星でも、有翼人は数えるほどしか存在していないと聞きます。 もしかしたらどこかでつながっていたのかもしれませんね」

アニム王が片手を顎に当ててうなずいていた。

そして、続けて聞く。

「ですが、そんな話をするために来られたわけではないでしょう」

ラミエルはうなずく。

「はい。 実は我々もこの帝都で学ばせてもらいたいのです」

ラミエルが少し前のめりになって話してくる。

「ふむ」

アニム王はラミエル見てうなずく。

「王様の世界の神が降臨されておられるのでしょう。 そのおかげというわけではありませんが、我々の身体にも魔力循環が活発になっているのを感じます。 魔法の技術もすたれてしまいました。 王様の国と交流をさせていただき、学ばせていただきたいのです」

アニム王は静かに聞いていた。

有翼人が暴走したという話は聞いたことがない。

ただ、気位が高く他種族を見下すことがあったと聞くが、そんな感じも受けない。

我々の世界システムがこの星のシステムを書き換えてしまったのも事実。

この有翼人たちは我々を利用して自分たちの社会を回復させたいのだろうか。

別に敵対するわけではない。

お互いに切磋琢磨できるだろう。

有翼人は愚かな種族ではない。

問題はない。 だが、保険はかけておきたい。


「そうですか・・ラミエルさん。 こちらとしては異存はありません。 交流は喜ばしいものですし、それに伴っていろいろスムースに行いたいものです。 もしよろしければ我々のギルドを設置してもらってもよろしいですか?」

アニム王は微笑みながら言う。

ラミエルは少し動作が止まったが、アニム王を見て答えた。

「はい、私としてはそのようにしていただいて問題ありません。 ですが、私だけの権限で新たな施設を設置することはできません。 申し訳ありません。 帰り次第すぐに返事をいたします」

なるほど・・アニム王はラミエルを見ながら思う。

臆病というか猜疑心があるというか、今まで同じような目線で物事を捉(とら)える種族と接触してこなかったのだ。

仕方ないだろう。


「どうぞ、ゆっくりとお考えください」

アニム王はそういうとラミエルに握手を求める。

ラミエルは少し戸惑っていたが、快くアニム王と握手をすると退出した。

退出と同時に係の女の人が入って来る。

アニム王に軽く頭を下げる。

「今出て行った有翼人だが、気づかれることのないように魔素を追跡してくれ。 可能なら相手の住んでいる場所を知りたい」

「はい」

アニム王の依頼に簡潔に返事をすると、係の女の人は風のように部屋から出て行った。


さて、有翼人とは珍しいものを見ることができた。

私のところでも見たことはない。

良い関係が築ければよい。

そうでなければ、不干渉でいいだろう。

アニム王は椅子に座り考えていた。


◇◇


帝都から離れて空を飛んでいるデミヒューマンのラミエル。

あの王、すべてを見透かしているようだ。 間違いなくこちらの意図など見抜かれただろう。

我が主は外を知らない。

そういえば、あの王の世界ではデミヒューマンの存在を知っていたようだ。

くだらない謀略を考えるよりも、正直に交流をした方がいいだろう。

常に有翼人が優れた種族だという概念は捨てた方がいい。

この世界にはエルフはいなかったが、あの王の世界にはいたのだろうか。

聞くのを忘れていた。

まぁ、これからだな。

ギルドを通して交流か・・笑わせる。

我々に対する監視塔の役目ではないか。

だが、どうすることもできないだろう。

一つ救いなのは、あの王は邪悪な存在ではないということだ。

こちらも鏡のように接すればいい。

・・・・

・・

ラミエルは空を飛びながらいろいろ考えていた。

ラミエルの後方には、魔素をほとんど感じさせないようにして尾行している部隊がいたが、気づいてはいない。


◇◇


ラミエルが帝都に来てから3日が過ぎた。

王宮に面会したいという有翼人が来た。

子供のようだ。

アニム王の応接室に案内する。


アニム王の前に来て、頼りなく突っ立っている女の子の有翼人がいた。

アニム王は微笑みながら席につくように促す。

有翼人の女の子はゆっくりと書簡をアニム王に手渡し、椅子に座る。

アニム王は書簡を受け取ると、係に飲み物と軽いおやつを持ってくるように指示した。


軽食が運ばれてくると、女の子は目を大きくさせてアニム王を見てお菓子を見る。

何度かそんな動作を繰り返す。

アニム王がどうぞと声をかけると、うれしそうに食べていた。

犬じゃないんだからと不敬な言葉が頭に浮かんだが、すぐに消し去り書簡を読む。

・・・・・

・・

なるほど・・交流はこちらの言う通りの条件で行うようだ。

この子の学校入学と有翼人たちとの交流を願うか・・。

この子は条件が違えば人質みたいなものだなとアニム王は思うが、どうやら有翼人の王の孫らしい。

単純に人質という型は当てはまらない。

真なる交流を望んでいると思った方がいいだろうか。


アニム王は余計なことが頭に浮かぶが、軽く頭を振りお菓子を食べている女の子を見る。

夢中で食べていた。

・・・

フフ、そんな下種な考えは要らないですね。

女の子を見ながらアニム王は言う。

「ウリエル、いっぱいありますから、遠慮せずにたくさん食べてくださいね。 これからもよろしく」

女の子は一度食べるのをやめ、アニム王に頭を下げるとまた夢中で食べだしていた。


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