DesireRose
うみのも くず
Prolog
人はその男を化け物と呼んだ。
人の形をした、死ねない化け物だと。
彼は生まれた時から、死なない体だった。何故かは分からない。刺された傷口はすぐに塞がった。火傷は跡形もなく消え、骨折は一晩で治った。天から授かった力だった。
そのこと以外、男はただ普通の人間だった。
ある者はその体を羨ましがった。ある者は激しく彼を罵った。彼の親は彼に愛想を尽かし、周りは彼を利用した。壊れない、都合のいい道具として。彼は他人の為に生きていた。体には傷が増え、日に日に醜く穢れていった。
誰も彼を愛さず、彼も誰を愛すこともなかった。
ただ孤独だった。
静かに生きたかった。人よりも命を持つだけで苦痛を強いられた。こんなことを望んだわけじゃない。
彼にとって、何もかも限界だった。
彼は手にしていた拳銃を自分の頭に当てた。しかし弾は不思議と俺の脳を貫通することはなく、破裂音だけが虚しく響いた。その音で彼は目が醒めた。そしてその音は、彼の何かを壊した。
次第に銃口の先は、全ての人間に向いていた。迷いもなく、ただ無心で命を奪っていた。彼には何も感じなかった。彼は失われてく命を羨ましかった。劈く悲鳴の残響が心地良く感じた。
目の前は深紅の闇に包まれて、何も聞こえなくなった。募った憎悪は彼を喰らい、蝕んでいた。彼は彼でなくなった。人形のように動かなくなった命を見て、全てが満たされ、楽になった。
それでもまだ、足りなかった。
気がつけば、口の中に広がる鉄の味を噛み締めていた。欲望のままに、獣の如く貪った。
彼はいつしか、命を食らっていた。
「可哀想に。私の世界へおいで」
女神と名乗る少女は、彼を誘うように手を差し伸べた。
憎悪に呑まれ、変わり果てた彼を包み込む。すると、彼の美しい顔が溶けたように歪んだ。体は黒く染り、赤い眼光を放っていた。彼にはもう、言葉さえ通じていなかった。
その男は、
DesireRose うみのも くず @Kuzha_live
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