第2話

「町を出て数秒で此処に来る勇者一行、初めて見たよ?」

白くて長い髭を触りながら神父は言った。

「仕方がないですよ。このパーティーには・・・。」

そう言いながら後ろで何かを言いあっている王様、女の子、そのおじいさん、遊び人を見た。

最初から勇者などが存在しないのだ。もし勇者が居たとしても、レベルUPを経験した事のない僕達が目の前に現れた魔王を倒すという事は不正行為をしない限り、倒す事ができないだろう。

そんな事を思いながらこの教会に来る前の出来事を思い返した。

 「貴様らがこの俺様を倒そうとしている勇者一行か・・・。」

両腕を組みながら、低い声で魔王は言った。

なんでこんな序盤から魔王が出て来るんだよ!僕はまだ拾った木の枝ぐらいしか装備出来ないレベルなんだぞ!

「うわ、マジぱねえ!あのさ、握手してくんないかな?」

遊び人は魔王を物珍しそうな目で見ながらそう言った。

「何してんだよ!そんな事を魔王がするわけがないだ・・・。」

言いかけながら遊び人の右肩を掴んだとき、いつの間にか魔王の目の前に王様が剣を握って立っている姿が見えた。そして、僕達パーティーの目の前で王様が魔王の吐息によって倒された。

その光景を見た瞬間、世界が暗転した。

 「後少しで魔王が倒せたのに・・・。やはり、安い武器だったのが駄目だったのだな。」

剣を天井に翳しながら王様は呟く様に言った。

「本当っすよね。あの防具屋、今から訴えに行きません?こんな弱い武器なんか買わせやがって!みたいな。」

王様に身を寄せながら遊び人はそう言った。

「おじいちゃん!私、頑張ったんだよ!」

「おう、頑張っとったのう!」

嬉しそうな顔をした女の子の頭をおじいさんは優しく撫でた。

そんな光景を見ていると、頭が痛くなってきた。

「取りえず、もう外は暗いみたいだから今日は宿を探しましょう・・・。」

溜息交じりに教会の扉を開けると、目の前に今の僕らでは到底倒す事の出来なさそうなモンスター達が両手を鳴らしながら立っていた。

 「今度はこの建物を出て数秒か・・・。」

退屈そうに欠伸をしながら神父は言った。

「やはり、この防具が弱すぎるからいけないのだな。」

「マジ最悪なんだけどー。」

「ねえ、あのモンスター、私の姿を見たとたんにいなくなったね。」

「凄いのう。」

呑気に4人はそんな会話をし始めた。

「ちょっと待ってよ!いくら何でもこれは酷すぎるよ!」

叫ぶ様に言ったその声は教会に響き渡った。

「そんなの、当たり前じゃろう。目の前で見ていたが、終盤辺りで出てきそうなモンスター達を今のそなたらが簡単に倒していたら、このわしの存在は必要ないじゃろう・・・。」

溜息交じりに神父は言った。

その時、僕はある事に気が付いた。そして、そんな神父の両手を握った。

「神父さん、僕達の仲間になって下さい!」

そう言った瞬間、神父の顔がみるみるうちに真っ青になった。

 「な、なんなんだ!このしつこさは・・・。倒した傍からまた蘇るなんて・・・。」

「貴様ら!チートをするなんて卑怯だぞ!」

17923657483回蘇生をした後、モンスター達は顔を引き攣らせながらそう言った。

「そなたたち・・・・そんな陳腐な攻撃ではわしらを倒す事が出来ないぞ?」

もはや狂気に感じられる笑みを顔に浮かべながら王様は言った。

「チートって何?それって、新種の食べ物の事を指しているのかな?」

木の枝を片手に持ちながらこの異様な光景に体を震わせているモンスター達に向かって僕は言い放った。

その後ろでは僕達が攻撃を受ける度に蘇生術を使い続けている神父が、息を切らしながら地面に膝を付いた。

「その後ろに居る奴の事だよ!」

神父を指さしながらモンスター達は言った。

その言葉を聞いて僕は噴き出す様に笑った。

「この神父さんは僕達の仲間だよ。仲間が仲間を助ける事は普通だろ?」

そう言った瞬間、モンスター達は恐怖に顔を歪めてその場を去って行った。

「もやしっ子・・・・怖ぇ・・・。」

そんな光景に身を震わせながら遊び人はそう言った。

 「世の中の平和を脅かそうとする魔王が居る限り、僕は負けない!」

長老から貰った伝説の大剣を握りしめながら目の前に立っている魔王に向かって言った。

「勇者!私が援護してあげるから、好きに戦って良いわよ!」

ウィンクをしながら魔法使いは杖を振るった。

「俺だって、やる時はやるんだからな!」

そんな魔法使いの隣から戦士が現れた。

「考えなしに突っ込むのは考えものですよ。」

溜息交じりに学者は戦士に向かって言った。

RPGと言ったら、普通こんな物を想像する筈なのに・・・。

ダンジョンのボスは目の前に立っている王様、もやしっ子、女の子、そのおじいさん、遊び人、教会の神父、長老を引き攣れたパーティーを見て、頭を抱えた。

「敵が最初から全力で向かうなら、僕達もそれ相応に向かわないと失礼だよね。」

そう言いながらもやしっ子は木の枝を両手で持ちながら、恐怖しか感じられない笑みを顔に浮かべた。

「そう、そう。どんな手を使ってでもさ・・。」

遊び人は手に持っている剣を部下の首に当てながら言った。そんな部下は救いを求める様な目で俺を見つめた。

「この者の命が欲しいなら、経験値と戦利品をよこしな。」

まるで盗賊の様な顔立ちで王様はそう言った。

俺は両目をこすり、これが現実の出来事であるのかを確認するため、もう一度そのパーティーを見た。しかし、景色は変わる事が無かった。

「よそ見は感心せんぞ?」

おじいさんの声が背後から聞こえたと思った瞬間、HPを3000削られた。

攻撃された所を押さえながらそんなパーティーを俺は見た。

「貴様ら!それでも勇者一行かよ!俺らよりも悪そうな雰囲気だしてんじゃねえよ!」

その言葉を聞いて、女の子がクスクスと笑い始めた。

「勇者様はこのパーティーに最初からいないよ?」

そんな女の子に長老は薬草を渡して、体力を回復させた。

辺り一帯にダンジョンのボスの悲鳴が響き渡った。




RPGって一体なんでしょうか。

誰かそれを教えてください。

それだけが、第1ダンジョンのボスをやっている私の望みです。

第一ダンジョンボスより

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RPGってなんですか? 雨季 @syaotyei

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