第9話 アリスシス・ヴァン・ツーヴェルク②
俺は謁見の間に来ていた。
赤い絨毯の先には親父がいて、その絨毯に沿うようにして国の重鎮が並んでいた。
「これより、アリスシス・ヴァン・ツーヴェルクへの聖剣授与式を行う!アリスシスよ前へ。」
司会役の男がそう促すと、俺は親父の横へ行き陛下に対して跪いた。
「剣聖よ、そちに聞こう。この度の聖剣譲渡の理由を申せ。」
「はっ、私の息子でありますアリスシスには剣聖たる器がございましたので聖剣を譲ることにしました。」
「良いわかった。次にアリスシスに問う、お主の覚悟を聞かせよ。」
「はっ、剣聖から聖剣を受け継いだからにはこの身、この命、全て王国のために使う所存でございます。」
「よかろう。これより聖剣および剣聖の譲渡に移る!剣聖!アリスシス! 双方前へ!」
俺と親父が陛下の前に立ち互いに向き合う
そして親父が腰にかけていた聖剣をとって俺に渡そうと手を伸ばしてきた。
それに手を伸ばした時、ビリっと痛みが走り剣が握れなかった。2、3度やっても結果は同じだった。
「剣聖よ!どういうことじゃ⁉︎」
「陛下、私にもよくわかっておりません!ですが一つだけ言えることがございます。言い伝えによると聖剣はその時代において一人しか扱うことができないということです!」
「よくわからんのぉ、代々こうして受け継いできたはずの聖剣がなぜここで受け継がれんのだ?」
「すみません陛下、私にもそこはよくわかっておりません。ですが、私の息子の他の2人にはすでに試してありますが2人とも弾かれております。」
「なんと! では、そちの話から推測するに.....この世の中にツーヴェルク家以外の所に聖剣の持ち主にふさわしい物がいる。ということじゃな?」
「.....その考えで正しいかと思います。」
「わかった。ここで起きたことに箝口令を出す!くれぐれも外に漏らすことがないよう肝に命じておけ!」
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謁見が終わったあと、親父と2人、親父の部屋で話をしていた。
「アリス、本当にすまないことをした。」
「いえ父上、父上のせいではありません。」
「そういうことではない、お前は今後聖剣に選ばれなかった無能と呼ばれても仕方ないのだ。」
「どういうことですか?」
「聖剣はな、次の持ち主を器の大きさ、能力の高さ、気品などを踏まえて選ぶのだ。それに選ばれなかったとすれば、そのどれか、もしくは全てが欠けていると思われても不思議ではないのだよ。」
「なるほど...そのような理由でしたか。今日はもう部屋に帰ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、すまなかった」
俺は親父の部屋から出たあと、自室で1人泣いていた。
(あれだけ、あれだけやってきて首席にもなったのに!なんで、なんで!俺は聖剣をもらえないんだ!間違っている、こんなことは間違っている!)
夜中までこの自問自答は続いた。
案の定、翌日から無能扱いの日々が始まった。
箝口令を敷いていたにもかかわらずどこから漏れたのか。
ツーヴェルク家は正義の名の下に悪を断ち切る家だ、そのためツーヴェルク家が恨みを買っていたり、疎ましく思っている家もある。
それに加えて、学院で成績上位で王女に気に入られ、人気の高いエリシアも隣にいるということでかなりの妬みを買っていたのも事実だ。
俺は王家やローザンヌ家に取り入られたい者たちからしたら目の上のタンコブだろう。
そう言った連中がここぞとばかりに俺を責め立ててきた。そこから数ヶ月は針の筵の日々が続いていく。
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俺の昔話はひとまずこの辺で切り上げよう。
もう目も慣れてきたしな、さぁこの状況をどうにかしようか!
アリスは1人洞窟を歩き出した、左右の腰につけた魔剣と共に.....
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(アレク)
よし、火が注いだぞ。
木の枝と木のツタを使って火起こしをしている。
木の枝を十字で組んで、横にした枝の方にツタをくっつけ、それを捻って縦にした枝に巻き付けて木の枝を回転させることで、摩擦による簡単な火起こしをしてみた。
実際にやると3時間くらいかかってしまった。
このまま火を焚いて、気配察知の魔法をかけたまま寝よう。
明日の朝からいよいよ行動開始だ。
絶対帰ってやるからな!
王都へ帰るという希望を胸にして、アレクは眠りについた。
アレクのこの旅が後に大きく運命を動かすことになるなど、まだ知る由もなかった
アップスタート〜奴隷から始まり最後に世界を救うまで〜 天月 乙矢 @otootoya
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