江國香織「つめたいよるに」の思い出
一番最初に何を書くべきか。
これってとても重要な問題だと思うんです。
大体の人は初めから読むでしょうし、はじめに魅力がなければ読まなくなってしまうでしょうから。
なんて思いながら本棚を見ていたら江國香織さんの「つめたいよるに」という短編集に目が止まりました。
誰にでも一冊くらいは読むと思い出が蘇る本というのがあると思います。
私にとってこの本はそういう本です。
中学受験をした私は12歳で多くの友達と別れました。
もちろん人気校だったので同じ小学校から進学する子もたくさんいましたが、仲の良かった子は皆それぞれ違う学校へと進学してしまいました。
初めてだらけの入学式。
そこで私は運命の出会いをしました。
学年主任のT先生。会った瞬間ビリっと来ちゃいました。
元々私には誰か一人を運命の人(恋愛的にというより人生の指針として)に仕立て上げてしまう癖があるんですよね、、、たぶん。
当時は気付いていなかったのですが。
私この先生に会うためにこの学校に来たんだわ。
この先生の言うことは絶対なんだから。
頭の中は完全にお花畑。
国語科だったT先生がお勧めした小説はほとんど全部読みました。
青春ですね。と言うよりも暴走と言った方が適切かもしれませんが。
その中の一冊がこの「つめたいよるに」です。
江國さんの静かで優しい、そしてちょっとだけよそよそしい文体が、私の青春だったあのT先生の印象と相まってなんとも言えない幸せな思い出となって今でも私の心に残っています。
余談ですが、最後にT先生とはその後どうなったかについてお話ししますね。
私がT先生みたいに文学について学びたいと言ったところ、先生はもう少しあなたが大きくなったら良い大学を教えてあげましょうと約束してくださいました。
それから二年もたたないうちに先生は異動になり、連絡が取れなくなりました。
私はいまだ先生のおっしゃった良い大学を知りません。
先生は今どこにいらっしゃるのでしょうか。
いつか、私はこうやって今もあなたの思い出を胸に生きていますよと報告したいものです。
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