abrh年h月s日
流れるように中学生になった私は部活に入らなかった。今日が部活動入部希望書の提出期限である。私は帰宅部というやつになった。しかし、帰宅部の中でも県大会があれば入賞はするであろう、優秀な帰宅部であると自負しておく。
友達の面子は小学生時代からほぼ変わりはなく、中学になって新しく入ってきた同級生とも「よっ友以上いつ面未満」の関係を保っていた。これも私が春休みに当たり付きのガムやアイスを、しのぎを削る思いで我慢してきた甲斐であるといえよう。さて、最強の帰宅部を名乗った所以であるが、私は帰宅後、勉学に勤しんでいたのである。嘘つき野郎め、とクラスメイトからも、小学生の先生からも、小学生時代の私からも言われそうであるが、これは清廉潔白、紛れもなく事実である。
小学校の卒業の数ヶ月前、私は君から中学の合格報告を聞いた。第一志望の私立学校に合格したらしい。私はとにかくすごいということだけは分かったので、文字通り、すごいねと言った。馬鹿みたいである。
しかし、中学入学になってすぐのことである。放課後、私が家の前で縄跳びをしていると君が帰ってきた。
この流れは入学後から自然に出来ていた。
私はゲームのやりすぎでゲーム規制がかかり、それが条件として縄跳び300回だった。君はバス通学で帰宅が私より1時間ほど遅かった。それが噛み合って、私たちはよく平日は話した。大抵は君が私の縄に足を引っかけてくることから始まる下劣な言葉の掛け合いだったが。
「勉強会を開きたいんだ、中学になって、周りを見ると勉強が追いつかないって直感でも分かったし、塾も辞めちゃって勉強の習慣もなくなっちゃったから」
「ほお、さすが」
刹那、間が空く。その間が、ブワッと君に黒くまとわりつく。
「え、えっと、勉強会に来ない?って意味だったんだけど」
私は今まで勉強を行ってきたことが無い。勉強が何をすることなのかもよくわからない。それは言い過ぎたかもしれない。まあ、だからといってきっと苦手でも無い。テストは毎回平均点に近い点数だ。しかし、全くもって勉強の意識が無かった私が勉強会というものに誘われるとは思わなかった。どろんとした漆黒の間を空けてしまうような、鈍感なことをしてしまったことからも意識の低さが覗える。これは恥である。
「え!自分が?」
「たしかに、君が勉強を真面目にしているところは見たこと無いけど、小学生の友達とも連絡とりにくいし、中学も始まったばっかだし。駄目かな」
「大丈夫!いくよ、いく」
舐めんなよと小声で付け加えたが、幸い向こうには聞こえていない。くい気味に私が応えると、じゃあ平日の午後5時集合で、と言って帰った。ちなみにこのときも私は必死に二重跳びをしていた。一応念を押しておく、これは本当である。
私も縄跳びの分の仕返しとして勉強会を少し荒らしてやろうかと思ったが、さすがに勉強は親たちがこぞって洗脳されたように「やれ」というものだけあってきっと神聖な何かだと思っていたのでやめておいた。
そういったワケで私は平日毎日5時から勉強に向き合うといった所業をこなすことになったのである。これで私も成績がぐんと上がって優等生…、あわよくば推薦されて、人生安泰・・・、バラ色の生活・・・、といった淡い妄想を抱いていた。
日記のような私と備忘録のような君 @Shiba_Ryunosuke
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。日記のような私と備忘録のような君の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます