捻くれ者のススメ

アリエッティ

ダークサイドの主人公

 ワシは意地悪な農夫。

我が牧場の近くにお供物をすると何でも願いが叶う泉があるという。しかし叶えられるのは一度きりで一つだけ。


「……。」

ああわかっとる、後の結末くらい。

多量に物を備え幾つもの願いを叶えようと欲を張った結果馬鹿をみるのじゃろう、知っとるわそんな事。

「童話の嫌な奴は歴代そうじゃった」

嘘を付き良い斧を得ようとするもの。

不正を働きこぶを移植される者。

婆さんを喰わし、泥舟にのせる狸公。


「言っておくが、最後のけだものとはワシと違う。あれは悪役からみても規格外の大罪人じゃ。」

ワシも心の赴くままに行動すれば、何かしらの報いを受ける事じゃろう。

「人参をぶらさげたのはそっちじゃ」

何がいけない?

ぶら下がった人参をそのまま食べるのが立派な考えか?

違うな、その人参を使ってカレーを作る方が余程快活で愉しげじゃ。

「老舗の店は最早、最先端の食事には勝てん。古き良きなど持っての他じゃワシは素材を利用して大きな物を作りたい。違うか?」

それを踏まえた上でワシは泉に向かう


願いの泉

「供え物を捧げれば声が聞こえるらしい。受け取れ、ために貯めた食料じゃこれでワシにも恵みを分けよ。」


『お前に願いを与えよう』「来たか」

元は取らせて貰うぞ。

「ワシを金持ちにしてくれ!

それも牧場をもっと広げて欲しい!

充分に遊べるような、愉しげな施設と

笑い飛ばせるような娯楽をくれ!」


『...願いは一つまでだ、欲を張るな』

やはりそうきたか。

「お前こそ甘くみるな」『..何?』

「今子供達は、飢餓に苦しみ喜びに飢えている。だからこそ牧場で足を育て食料を増やす必要がある。」

『...あぁ..。』

「その上で生活難であっても学べる環境、趣向や性質を養える豊富な娯楽や楽しみが必要だ。..しかしそこまではワシの財力では不可能、じゃからお前に頼み込んでいる。それでもお前は冷徹に、欲張りだといえるのか?」


『..いや、あの...』

「お前に渡したその食料ですら、分け与えても足りないのだ。それ程物資や食料は不足している。それでもあの子たちは必死に笑顔を見せている、その強さがお前に理解出来るのか!?」


『芯が強いなぁっ!!

邪になれよもうちょっとさぁ!

霞む、霞むよさっき来た律儀な奴が!

馬鹿みたいだよ正直だと思ったのが!

頼むから正式な悪党でいてくれよ!』


「...願いを聞いてくれるのか?」

『......聞くよ。

だってもう絶対断れないじゃん。』

「そうか、良かった..帰るぞ。」

すまん、悪いことをした。

やはり欲というものは消えないものだ

ワシはとんでもない悪党じゃよ。


「..なぁ、正直な農夫よ。」

結局ワシも、醜い童話の一つになってしまったようだ。

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