第45話悪魔サルガタナス
ガチャンガチャンと鈍く、耳障りな金属音を発しながらサロメがグレムリンと呼ぶ機械人間が近づいてい来る。
全部で六体。
生気の無い赤い単眼でこちらを見ている。
誰がどう見ても友好的でないのは明らかだった。
サロメが床を蹴る。
次に壁を蹴る。
天井を蹴る。
瞬時にグレムリンの内の一体の背後に立った。
両腕を軽く振る。
きらりとサロメの手元が光る。
その直後、グレムリンの体が斜めに切り裂かれた。
ずるりと上半身がずれ、床に落ちた。
サロメの赤い爪には鋼鉄ですら切り裂く鋼の糸が付けられていた。
この糸は凄まじい切れ味を誇るが、よほどの熟練者でなければ扱うことはできない。
下手をすれば自身の体を切り裂いてしまうからだ。
サロメはこの鋼糸を扱う達人であった。
バチバチと火花を散らし、グレムリンは倒れた。
仲間のことなど無視して、グレムリンがサロメに襲いかかる。
三本指には鉄の爪が生えている。
それをもって斬りつけようというのだ。
村雨丸が駆け、グレムリンに飛びかかる。
村雨丸は鋭い爪でグレムリンの頭を打ち砕く。
単眼を握ると顔から引き抜いた。
オイルや細かい部品が周囲に飛び散る。
よろよろとグレムリンは歩く。
村雨丸はさらに攻撃する。
胴体に手刀を叩きつける。
手刀は胴体を突き抜けた。
どんと大きな音をたて、グレムリンは後ろに倒れた。
彼も火花を撒き散らし、動かなくなった。
「皆さん、下がってください」
グシュナサフが叫んだ。
豊かな胸の前で腕を交差させている。
その声を聞いたサロメと村雨丸は後方に飛ぶ。
グシュナサフはうっすらと目蓋を閉じ、精神を集中させる。ふっと小さな息を吐く。
交差させた腕をを一息に振り下ろす。
「
一陣の風がグシュナサフの前に発生する。
その風はXの形に変形し、グレムリンめがけて空を駆け抜ける。
風は残り四体のグレムリンを巻き込み、バラバラに切り裂いていく。細かい部品だけとなり、グレムリンは物言わぬ鉄塊となってしまった。
天王寺春香は「鉄の制服者」「機械の知恵者」「風の聖霊王」の称号が与えられました。
ドロップアイテム「鉄の爪」「機械の瞳」「機械の腕」がアイテムボックスに送られました。
春香たちはさらに奥へと通路を進む、幾度の戦闘を経て彼らは鉄の扉に辿り着いた。
「意外とあっけないな」
と獅子雄は感想をもらした。
「そうだね」
春香が答えた。
戦闘は凄まじかったが、春香たちの戦闘力は遥かに上回りその全てに勝利していた。
「私はあんたらに感謝しているよ。私一人じゃあ、ここまで辿りつけなかったからね」
そう言い、サロメは白い手を鉄の扉にあてる。
「聖ペトロの名において解錠せよ」
静かに扉が開く。
その広い部屋のほぼ中央に一人の女性が立っていた。
白いドレスを着た豊満な体をした女性だった。
紫色の瞳でこちらを見ている。
「救世主の王と戦士の方々ですね。私は三つの鍵の一つ乳香の守護者サルガタナスと申します」
その口調は礼儀正しいものの、彼女の体から発生する魔力はとんでもないものであるのは明らかだった。
白虎の剣を抜き、獅子雄は春香の前に立つ。
「あいつ、何かあるぞ」
不気味な気配に彼は警戒する。
「さあ、希望の世界に誘いましょう」
サルガタナスは自らの豊かな左の胸に手を突き立てた。ずぶりずぶりと手は食い込んでいく。サルガタナスの美しい顔が苦痛に歪む。
彼女は何かを掴むとそれを引き抜いた。
サルガタナスはそれを春香たちの前に見せつける。それはどくどくと脈打つ赤い心臓であった。
僕らは夕暮れに世界を再構築する 白鷺雨月 @sirasagiugethu
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