おまけ・庭の外

 校舎内、廊下にて。

 丸眼鏡の女生徒がアザレアを追う。


「アザレアー、交配しようよ!」

「忙しいのです! 忙しいのです!」


 逃げるアザレアの目にイベリスが映る。アザレアは息を切らしながらイベリスの元へかける。


「イベリスさん! イベリスさん!」

「アザレアだ。おーい……あれ」


 アザレアはイベリスの後ろに隠れる。イベリスの上着をぎゅっと掴む。

 丸眼鏡が追い付いた。


「やあイベリスじゃないか。今アザレアと交配しようと思ってね」

「ビオラか。どうしてアザレアなんだい?」

「やっと私の部屋に新しい子がやってきてね。親睦を深めるついでに一緒に交配しようと思ってな」


 ビオラは花の模様や形などの微妙な個体差にこだわり、もう何年も交配に夢中なクラスメイトだ。

 アザレアを見る。口と手をぎゅっと結んでビオラを見ている。私の上着を掴んでいる手を握ると、アザレアはこちらを見て握り返す。

 ビオラは隠れたアザレアをのぞき込む。


「さあアザレア! 私と交配しようじゃないか!」

「アザレアと先に交配するのは私だ!」


 ビオラにそう言い、「ね?」と振り返ると、アザレアは驚いた表情で私を見た。それから頬をほんのり紅潮させた表情で、「はい!」と言う。話を合わせてくれた。

 なんだか周りがざわついているのは、気のせいだろうか。

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アザレアのヒメごと 向日葵椎 @hima_see

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