第4話 茅野愛梨は協力者になりました。

 私は幼馴染みの勇気が好きだった。いつの頃か彼を目で追うようになっていた。

 勇気と出会ったのは保育園の時だった。私と勇気の両親は帰りが遅かったため、仲良く二人でよく遊んでいた。

 同じ小学校に入学し、いつも二人で居た。私は小3の時に空手を始めた。彼は私のことを心から応援してくれていた。この頃からだろう、勇気を意識し始めるのは。私が空手を始めたこともあり、勇気と二人で居る機会は減っていた。

 中学校も同じになった、というよりは同じにしたのだ。空手部がある高校を選んだこともあるがそれよりも勇気の事が好きだったのだ。

(今日こそは……勇気に告白)

そう思っている内に中学の3年間は終了した。

関係はほとんど何も変わらない。幼馴染みのままだった。

 高校生になっても愛梨は告白をできないでいた。高校生になると、勇気は才波さんに気が向くようになっていた。愛梨は薄々と感ずいていた。多少の焦りを感じていた。

告白をしようとし、口を開こうとするが、緊張で体が固まっていた。

(何で告白できないのよ~!?)

溜まった気持ちは空手にぶつけた。そんな生活を送っていたある日…………。

 勇気の家に行くと、そこには赤ちゃんがいた。愛梨は自分の体にとてつもない衝撃が走っていた。

「勇気に赤ちゃんが…………」

とても動揺した。色々な感情が込み上げた。まさか、自分の好きな相手が高校生なのに子供をつくったなんて思いもしなかったから。愛梨は咄嗟に勇気に色々な感情を込めて殴り、この場所から逃げ出した。

何も分からないまま、愛梨は学校に向かっていた。

 愛梨は勇気に子供ができたと思い込んでいたが、勇気を嫌いになることができなかった。

(もう何なのよ……)

嫌いになれなく、更には勇気の事をまだ思っている自分に腹が立っていた。

(本当に……あれは勇気の子供……?)

愛梨は幼馴染みということもあり、勇気の事をとてもよく知っていた。彼の性格なら、高校生で子供はつくれないと思っていた。まだ微かに勇気の事を信じている部分もあった。

 学校で愛梨は勇気とすれ違うがお互いに何も話せないでいた。確かめようとするが、できなかった。かける言葉が見つからないでいた。

とても仲が良かった今までの関係が崩れ始めていた。

 

 数日間、勇気は割りと平和に学校生活を遅れていた。子育ては相変わらず大変なものの、学校では授業を受けられるし俺に好奇心を持って話しかけてくるのは、竜だけになっていた。

(気が楽になってきた……だけど寂しいな)

いつもは幼馴染みの愛梨と仲良く話していたが愛梨が才波さんを目撃した日以来話すことはなくなっていた。廊下ですれ違うことがあるが、お互いに目を反らしていた。

(嫌われたな…………俺)

状況から察するに俺の子供だと思い込んでいるようだ。まあ、普通はそういう考えになるだろう。

(どう弁解しよう……)

俺は愛梨の誤解を解きたかった。


 オギャアオギャア

(おっと泣き出してしまった)

俺は人の気配がない校舎裏へと移動する。

(よしっここなら…………)

俺は周りを見て人がいないことを確認する。

「よ~し、よ~し」

俺は才波さんを慰める。

(何だか、この行為慣れてきたな)

俺はそう思うと、才波さんに微笑む。

泣き止み、にたぁと才波はんは笑顔になる。

「よしっ」

俺は安心し、教室に戻ろうとしたとき……

「あれっ? ……勇気」

「愛梨!?」

愛梨が俺の目の前に現れた。どうやら、校舎裏の自動販売機に飲み物を買いに来たらしい。

(気まずいな……)

2人……いや3人になるのは、目撃された日以来だった。

俺は愛梨に弁解しようとするが、言葉が出てこない。迷ってその場から逃げ出しそうになった時、愛梨から意外な台詞が出てきた。

「その赤ちゃん、あんたの子供じゃないんでしょ?」

俺は目を丸くする。弁解しようとしてたことをさらっと愛梨が言ったからだ。

「……何でそう思う?」

すぐに頷けばいいものを俺は愛梨に聞き返した。何で分かったのか理由が知りたかったのだ。

「だって、全然似てないじゃないあんたからそんな赤ちゃん生まれるわけないでしょ」

何だか色々傷ついたがその通りかもしれない。

「…………そうだ、俺の子供じゃない」

「やっぱりね、じゃあその赤ちゃん何なのよ?」

「それは…………」

俺は愛梨に話すことにした。幼馴染みの愛梨はこれでも、意外とたよりになる。俺は信じて口を開いた…………。


「……その赤ちゃんが、才波さんってこと?」

「……俺はそうだと思ってる」

普通は信じられないだろう。その場にいた俺でも信じられたかったぐらいだ。

「信じられるわけないでしょ?」

(やっぱり信じてくれなかった)

予想していたことだ。逆に何で俺は信じてくれると思ったのだろう。

「才波さんが勇気の家に行ったことと、雷が落ちたってことは信じないけど……才波さんだって事は信じるわ」

「えっ……信じてくれるのか?」

「だって勇気が赤ちゃんを連れてくる時と、才波さんが不登校になるタイミングが見事に一致してるじゃない。それに……その赤ちゃん才波さんのの面影がある」

 才波さんの事だけ信じてくれただけで俺にとっては十分だった。理解者がいるととても心強い。

 愛梨が言った通り才波さんは今、不登校ということになっている。今頃、家族の人は必死に捜しているだろう。

「助かった……ありがとな」

俺は愛梨に感謝の言葉を告げる。

少し面倒なところがあるがやっぱり愛梨はとても心強い。幼馴染みで良かったと心から思った。


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完璧少女才波さんを一から育て直したらギャルになりました。 @sugayamaka

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