キュルケとの出会い⑩

 そして何年か経った。

 あれからもやはり嫌がらせや初心者イビリは続いた。俺がEランクになってもフレーメルで最弱なのは変わらなかったのと、やはりテイマーという肩書きが問題だった。ルミさんはかばってくれても、フォローしきれるはずもない。それどころかルミさん以外の職員はテイマーの俺を邪険にしていたようにも思う。


 それでも毎日、キュルケと一緒にコツコツ依頼をこなしてきた。


「キュルケちゃん、すっかりスライムっぽさがなくなりましたねえ」

「きゅー」


 ルミさんに可愛がられて気持ちよさそうにするキュルケ。

 キュルケはいつしか羽が生えてふわふわと空を飛ぶようになった。角も生え、羽毛に覆われた姿はもう、元のスライムからは想像もつかない状態だった。その分強くもなった。


「あ、そうだリントさん。今日はリントさんにお話があるんです」

「話……?」


 そしてこの日。


「どっちもビッグニュースですよ!」


 自分のことのように嬉しそうにルミさんが言ってくれる。


「なんと! Dランクに昇級です!」

「おおっ!?」

「おめでとうございますー! もう実力は十分と、ギルドマスターもお墨付きでしたよ」

「ギルドマスター!?」


 ギルド中がざわつくのがわかった。

 それもそうだろう。Eランクでしかなかった俺がギルドマスターの目に止まっているだなんて、誰も思っていなかっただろう。


「それで、これはギルドマスター、クエルからの手紙です。本当なら直接話がしたかったと言っていましたが、長期出張中ですからね」

「ギルドマスターが……」


 更にざわめくギルド中の冒険者たち。俺自身、興奮が抑えきれなかった。


「これ、すぐに見ても?」

「ふふ。仕方ないですね」


 ルミさんの返事も待ちきれず手紙を開封する。

 そこには……Dランク昇級のお祝いと、王都へ行くことを勧める内容が記されていた。

 そしてもう一つ驚いたのは……。


「これは……」


 クエルもテイマーだったことが、それでいてAランクの冒険者にまで上り詰めたことがそこには記されていた。





「こんな感じで出会って、王都に来た」

「なるほどねえ……リントくん、最初からテイマーの才能に溢れてたんだねえ」

「いやいや……今の話ちゃんと聞いてたか?」


 なんでそうなった。


「聞いてたよっ! すごいじゃん! 初日からキュルケちゃんとしっかり協力して、あっという間に王都に来ちゃったんだから!」

「いや……えっと……」


 褒められて悪い気はしないがなんか照れくさい。


 そんな話を続けながら空の旅を続ける。

 その後も細かい話を根掘り葉掘り聞かれながら、そのたびに過剰なまでに褒めてくれるビレナとじゃれていたら、あっという間に空の旅は終わりを迎えた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

脱法テイマーの成り上がり冒険譚 ~Sランク美少女冒険者が俺の獣魔になっテイマす~ すかいふぁーむ @skylight

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ