水音
木下ふぐすけ
第1話
これは、こないだの夜の話。
次の日はバイトのシフトが朝からだったから、早めに寝ようと思って午後十時には布団に入ったんだ。
結局、しばらくは寝転がってスマホをいじってたんだけど、30分もたつ頃にはうとうとしてきた。
そうしてだんだんまぶたが重くなって来た頃に、キッチンの方から音が聞こえたんだ。
ボタッ……ボタッ……ってね。
蛇口の締め方がちょっと緩かったかなと思って、眠気と戦いながらのそのそと布団から這い出してキッチンの方に向かったんだ。
すると不思議なことに、僕がキッチンについたときには、音はしなくなっていた。
念の為、蛇口をきっちり締めて布団に戻ると、また、さっきと同じように音が聞こえ始めた。
ボタッ……ボタッ……って。
蛇口はしっかり締めたはずだから、僕は音を無視して寝ようとしたんだ。
けど、できなかった。
眠ろう眠ろうとすればするほど、音が頭の中に響いて眠れない。
かといって、頭はスッキリしないんだ。
眠いし、眠りたいのに、眠れないんだ。
それでも眠ろうと目を閉じてゆっくり深呼吸しているうちにだんだん音は引いていった。
結局、何だったのかはわからない。
けど2つほど、言えることがある。
この謎の水音事件のおかげで僕は寝坊してバイトに遅刻した。
そして、慌てて向かったバイト先ではコンビニ強盗が起こっていた。
その顛末はニュースでやってたとおり。
強盗を取り押さえようとした店長はナイフでぐっさり刺されて、今も意識不明の重体だ。
正直、顔見知りが意識不明なのにこんなことを言うのは不謹慎な気もする。
それでも、謎の水音は僕のことを助けてくれたんじゃないかと思えてならないのだ。
水音 木下ふぐすけ @torafugu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます