言葉が出ません。
胸がギュワンギュワンしています。
星の光と太陽の闇。
運命に逆らう生と殉死。
第一章から息をつかせない。
小説は交響曲だったんだ。
登場人物の一人一人のメロディが、
人と人が奏でるハーモニーが小説全体を響かせあいながら終章に向かう。
遠い遠い昔のパレンケの物語。
ジャングルの奥にそれはそれは豊かな国がありました。
紅い星が現れて運命を分かちます。
意味をつけて意味に殺される。
人間の知恵が神様を生み、生み出した人間を滅ぼす。人は賢いのか愚かなのか。人には自然があまりに大き過ぎて何ともし難いから神様が生まれたのに。
自らを信じるものが生き残る。
昔むかしの物語、それは昔を語ると同時に今を記す。
私だったらどうするだろう。文化に支配されるのか、主体的な生を選ぶのか。
是非、読んで欲しい作品です。
いまより遥かに昔、数千年前の文明にはごく当たり前のように生贄という文化が存在していた。現代人の観点から見れば馬鹿馬鹿しい行いかもしれないが、当時の人間達の営みに生贄というのは密接に関わってきた。それは今日の歴史が証明していることだろう。
この物語はそんな生贄をひとつのテーマとした作品であろう。「パレンケの舟」という題名はなんとも言い当て妙であり、ぜひ自身の目でその意味を知って欲しい。
物語はまだ序盤であろうが、中世や未来よりも練るのが難しいであろう古代の世界観をしっかりと表している。
これから生贄を受け入れる者と拒絶する者達の間で物語が大きく動くでしょう、先が楽しみな作品でした。