情報交換──永遠野鴪華 2

「それで、あなたはどんな話をしてくれるのですか?」


「そうね、そこそこ面白い話を聞かせてもらったから、永遠野鴪華とわのいちか能力マギアが何に関係しているかを話そうかしら」


「会長の能力マギアについてですか……」


「どうかしら? それとも、それじゃ不満なのかしら?」


 そこで彼女は不敵な笑みを浮かべる。

 何かをしたのか、それとも何かをする前触れかなにかなのか。

 ただ、彼女の表情だけでは、俺は何もわからない。


「いえ、それだけの価値はないと思っていたので。ですが、そうですね。それだけ満足していただけたのなら、僕も嬉しいですね。それではお願いします」


 彼がそう言ってから、一呼吸おいてから、彼女はたった一言、端的にこれだけ言った。


「そうね、誰も知らないでしょうね」


「……そうですか。ありがとうございます」


 状況の異常差はそれだけで気づいた。

 いや、どちらかというと、気づけた、だ。

 だって、この状況はきっと、だからだ。

 そして、それはきっと最初から。

 そして、タイミングを計っていたかのように生徒会長はこう言った。


「それでは、時間になりましたので、次のゲームに進んでください」


 それは、体育館ここにいることを忘れさせるほどの声で、体育館中に響き渡った。



 二戦目。

 一戦目の前のときとは違い、椅子取りゲームのようなものはなかった。

 つまりは、一戦目をするに当たって、それだけの人材であるかを見るための予選だったというわけだ。

 負けた生徒らは予想外なことに、体育館に残っている。

 それだけ、生徒会長の存在が大きいということなんだろうか。


「ほら、次に行くわよ」


 そして、現在は花札を終えた。

 俺に花札はできなかったのだが、マリーができたため、言わば圧勝。

 最後なんて、五光を見せてくれた。


「あんた、次はババ抜きなのよ? そんな調子じゃ勝てなくなるわよ」


「あ、ああ、悪い……」


「今回はどうしても勝たなくちゃいけない理由があるの。これからのためにもここで優勝しなくちゃいけないの」


 どこか焦ったようなマリーに、俺は息を呑む。そして、俺はその言葉が深く、心の奥深くに刺さった。


「そうじゃないと……」


「なんか言ったか?」


「なんでもないわ。それより、ババ抜きは両方参加のルールだったはずだわ。あんたがそんな調子じゃ、勝てるものも負けるわよ」


「それは、その通りだな。お前にしては良いこと言うな」


「お前にしてはってなによっ! 私はあんたと違って教養も実力も等級ランクも兼ね備えた、容姿端麗なのよ!」


「それ、自分で言うことじゃないだろ」


 こいつ、まじ面白いやつだな。

 初めて会ったときは、かなり恐怖だったんだけどな。今は本当によかったと思ってる。

 ここまで来れたのもきっと、マリーが居てくれたからだ。

 そうじゃなきゃ、他のE等級ランクと同様に虐殺され、その日のうちに退学になっていたはずだ。

 それは面白そうなやつだから助けるとか言って、本当に助けてしまった。

 それだけじゃなく、アンドロメイドを寄越したり、他の人の悩みを解決するだけの頭脳があり、それでいてポンコツなところもあって。


「ふん、でもそれは本当のことでしょ?」


 そう言って俺の前にでて、ニコッと微笑みながら指を立て、首を傾げる。

 その仕草のあまりの可愛さにドキッとする。


「どうしたのよ! 可愛いくなって言いたいわけ?」


「いや、そういうわけじゃねーよ」


「そう? まあ、それならいいわ。あっ、あの席ね」


 そうして、ババ抜き会場に着く。そして、そこには既に先客が居た。

 まだ、対面の席は空いてるので、俺たちは対面の席に座る。

 そして、そこにいたのは──。


「こんにちは。って、君たちでしたか。何かと縁がありますね。そろそろ自己紹介でもした方が良いでしょうか?」


「いらないわよ。私の等級ランクはAだもの。あんたらなんかには負けたりしないからいいわよ。それに、どうでもいいやつなんかの名前なんて、もの」


 そう、何かと縁のある、いけ好かない青年だった。

 そして、隣には少し怯えたような様子の、大人しそうな子がいた。


「そいつがパートナーなのか?」


「そうなんですよ。最初会ったときから怯えていたので、少しでも助けになりたくて、パートナーとして組んであげたんです。そうですよね?」


「…………はい」


 少しだけ首をこくんと動かし、肯定の意を示す。


「ふーん。なるほど、そういうことね。まあ、わざわざ面倒事に首を突っ込んで、自分の首を絞めるようなことをするつもりはないから、安心しなさい。ただ、二度と私の前にその姿を見せないでくれるかしら」


「これは手厳しい、難しいことを言いますね。それとも僕がなにかをしたとでも?」


 なんとなく、空気がピリついてきたような気がする。

 そして、マリーとそいつの間には、何やらが始まったような気がした。


「それでは全ての準備が整い終わりました。これより最後の戦いを始めてください」


 そして、いつの間にそこに置かれてたのか、テーブルの真ん中にはトランプが一つ置かれていた。

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リュグナーレファン アールケイ @barkbark

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