12話 情報交換──永遠野鴪華

「その、等級ランクはなんですか?」


「あー」


 その言葉に、俺は言葉を詰まらせる。

 正直、あまり言いたくはない。


「あ、すいません。そういったことは、まだ話したくないですよね。不躾にすいません」


「いいえ、能力マギアに関わらないことなら、大抵のことはなんでも、聞かれたら答えるわ。ここは、情報交換といきましょう。お互いの知っている情報の交換」


「えっと、あなたの名前は?」


「マリー・マーガレットよ。そうね、気安くマリーと呼んでもいいわよ」


「それじゃ、その、マリーさんの等級ランクは──」


「Aよ」


 なんか、俺の知らないところで、話がどんどん進んでいってしまっている。

 まあ、仕方ないか。俺が話に参加したところで、なんの成果も出ないし、ここは聞くことに徹しよう。

 俺は、そう思っていると、どこからか視線を感じ、そちらの方を見る。

 そこには、生徒会長の姿があった、と思う。

 あまりにも遠くだから、正確には認識出来なかった。


「釘宮さん。どうかしましたか?」


「あっ、いや。なんでもない」


 俺の不自然な様子に気づいた爽やか、もとい、青葉朝陽あおばあさひが俺に声をかけてくる。

 なんとも、周りの見えてるやつだ。クラスでもそこそこ人気に違いない。爽やかだし。

 とりあえず、さっきのことは誤魔化しておく。


「ところで、あなたたちの能力マギアだけど、相手の感じてることがわかるとか、そういうのじゃない?」


「あっ、すいません。違います」


「えっ……?」


 その言葉に、俺も少し驚く。

 途中から、二人は息をピッタリと合わせ、俺に和了あがられないようにしていた。


「その、僕たち双子で、互いの考えてることがなんとなくわかるんです。でも、その、あくまでなんとなく程度なので、違うこととかも結構ありますね」


「へえ、双子っておもしろいわね」


「そうですかね……」


 それじゃ、結局この二人は能力マギアを使っていなかったのか……? いや、使ってたかもしれない。ただ、それがわかり辛かっただけという可能性はある。


「あっ、そうそう。釘宮の等級ランクならEよ」


「あっ、そうでしたか。だから、あのとき……」


 せっかく、あのときは逃れることに成功したというのに、なぜここで言うんだ。

 いや、謎の能力マギアを持つ、A等級ランクに並ぶE等級ランクというイメージをもたせるためか。

 いや、そうであってほしい。


「その、釘宮さんの能力マギアは幸運系のものですか?」


「いえ、違うわ。これで、貸し借りはなしね」


「ええ」


 あっさりと、その話は終わる。

 正直、今の一瞬のやりとりになんの意味があったのかわからない。

 ただ、彼と彼女の中では、なにか意味のあるものだったのは確かだろう。


「ところで、あなたたちは生徒会長の話をどれくらい知ってるのかしら?」


「生徒会長さんについての話、ですか……。そうですね、僕たちが知っているのは、二つですね。まず、彼女の能力マギアの名前が未来時間タイム・ラプスであること」


 そこで、彼は意図的に言葉を切る。

 わかってて、そこで言葉を切ってる。

 もう一つがなんなのか、それを知りたがることを……。


「もう一つですが──」


「彼女について、私が知ってるのは五つよ。そのうちの一つを話すから、もう一つも教えて」


「わかりました。それなら、話します。ところで、学年に一人しかいないとされる、S等級ランクの存在はご存知で?」


「もちろんよ」


「それなら、現在、生徒会長を務めている永遠野鴪華とわのいちか先輩は、去年、現在3年生のS等級ランクと戦ったことはご存知ですか?」


「そうね、話は聞いてるわ。生徒会長が瞬殺、まさに瞬間で勝負をつけたことで有名だもの。S等級ランクの中でも、生徒会長は別格だって、有名だったはずよ」


「その通りです。彼女は、他のS等級ランクとはまるで別格の存在なんです」


 それはつまり、この学園に3人しかいないS等級ランクの生徒は三つ巴になってるわけではないということだ。

 現在は生徒会長の一強。


「それだけ、なわけじゃないわよね」


「ええ、問題はここからなんです。当時、戦った現在3年生の生徒の能力マギア電界之主エレクトリッカーとして有名だったそうです」


「へえ、それは知らなかったわ。それで?」


「彼の等級ランク、どうなったと思いますか?」


「彼ってことは、電界之主エレクトリッカーは男の人ということよね?」


「さすが、A等級ランクですね。そんな細かいところまで……」


「そうでもないわよ。そうね、等級ランクAに降格したんじゃないかしら?」


「……っ! その、よくわかりましたね。その通りです。学年に一人しかいないS等級ランクが、一人もなくなってしまった状態なんです」


「それで? そのあと、誰か他の人かその電界之主エレクトリッカー等級ランクをSに昇格させたんでしょ?」


「いえ。それが、誰もS等級ランクになっていないのです。本来、S等級ランクになるには、S等級ランクに勝つ必要があります。つまり、この学園内にS等級ランクは二人しかいないんです」


「そういうことね。これで、話は終わりかしら?」


「いえ。これは噂でしかないことなのですが、今年の入学生の学年に二人目のS等級ランクの生徒がいるという話を聞いたので……。これで、話は終わりですよ」


 生徒会長の永遠野鴪華とわのいちかについてというより、永遠野鴪華とわのいちかが関係してることの気がするが、それでも大事なことなのだろう。

 その情報一つが、永遠野鴪華とわのいちかについて知る、鍵となる可能性もあるのだから。

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