第6話 連休明け

 夏季連休が終わり、いつも通り会社に行った。

 角田さんがいない会社に。

 

 朝礼が終わった後、小田桐が寄ってきた。

 角田さんの奥様が「家に盗聴器が仕掛けられているかもしれない」と云い、警察と家族に全てを話したそうだ。

 全てというのは、浮気していた事。

 浮気相手と会っていた時の録音テープが送られてきて怖くなったそうだ。


 浮気相手と会っていた時の録音?

 あの時投げつけたテープの事? しかし何故そんな物が?

 角田さんが亡くなってからは浮気相手と会っていないはずだ。

 盗聴器で確認している。

 つまりその録音は、私が盗聴器を依頼するより以前の物。

 誰が何のために?

 

 しかし盗聴器を仕掛けたのは裏サイト業者だし、手掛かりを残すような事もしていないだろう。

 警察が私の所に来る事は無い。

 私の復讐はこれで終わりになるのだろうか。

 気持ちは全然晴れない。

 

 一週間は長い。

 角田さんがいなくなって、それは一層強まった。

 今週はあと三日行けば休みだ。

 

 家に帰ると小さい段ボール箱があった。音響メーカーからだった。

 母が懸賞好きなので、何かが当たったのだろう。

 品名はイヤホンだった。

 母は、イヤホンなら私にくれると云った。

 開けてみると、ウォークマンとイヤホンのセットだった。

 カセットが最初からセットされているらしい。

 

 何だろう、とても気になる。

 再生ボタンを押して少しすると、声が聞こえてきた。


「俺は知っているよ」角田さんの声だった。


 何故? これは……角田さんの奥様に送るはずだったカセットではないか。


 私は裏サイト業者に二つ頼んだ。

 一つは角田さんの家に盗聴器を仕掛ける事。

 もう一つは、角田さんの声を加工したカセットを奥様に届ける事。浮気をほのめかす内容を。


 しばらくすると、もう一つのメッセージ。

「私の正体を知った貴方は、非常に危険な存在だ」


 正体? こんな事が出来るのは……裏サイト業者。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

連休 青山えむ @seenaemu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説