広がるのは仄暗い、雨空の世界。一つの映画がここに。

読み始めた瞬間から、文字の一つ一つが浮かび上がり情景となって映し出されるようでした。まるで映画館に来て映画を見ているような気持ちに。

物語のキーとなるのは、タイトルにもある傘をささない少女です。彼と出会った彼女が何を考え何を想っていたのか、最後まで読み進めてようやく分かりました。

予測の出来ない展開に何度も裏切られました。胸を動かされる作品に久しぶりに出会えた気がします。

「骨を捧げて肉を断つ。命を捧げて心を断つ。添える花は桜。差し出す傘は――」

日常の喧騒から離れ、しっとりと小説の世界観に浸りたいとき。
皆さんも是非読んでみてください。