第32話 そして

するすると真実を口にした瞬間に、

自分がどれだけひどいことをしたかを自覚するしかなかった。

リョウと彼の周りの人間を呪った。

海藤の両親はリョウとは血の繋がりはなかったが、周りの人間として、一族としての呪いを受けている。

だから、海藤の両親は仲睦まじくても、

別離することはなかった。

もう一度新宮は、カオの顔を見る。

歪んでいる彼女の顔はよくよく見てみれば泣きそうな子供のような表情だった。

カオは小さく言う。


「本当にリョウは…私を裏切ってないのか」

「裏切っていない」

そうだ、あの時自分は本当に孤独だった。

村人たちは女神として、村の立役者としての自分にしか興味がない。

リョウは自分ではなく人間の女を選んだ。

神の世界には帰れない。

ただ一人、リョウの友人レイだけが自分たち二人の過ちを指摘してくれていたのに、それを聞き入れられる心がなかった。

今、目の前にいるカオは、先程とは違い、目に力が入っている。

そして、新宮をすり抜けて、走っていった。


新宮は突然光に包まれる。

「タイムオーバーか」

一人言をいいながら、きっと大丈夫だと思えていた。

ふと気付くと

目の前に海藤と朝美が現れた。

海藤は照れた顔で新宮に声をかける。

「おかえり」

朝美は上機嫌に聞いてくる。

「きちんと確認できたのか?」

口調は男らしい。

新宮は語りだす。

「あぁ、全て見てきた。そして、自分の気の済むようにしてきた。」

言動は変わらないが、表情は柔らかくなっている。

「そして…本当にすまなかった。海藤。私のせいでお前に辛い思いをさせて」

長々と謝罪の言葉を並べようとした新宮に、

海藤はいう。

「いいんだよ!新宮さんが笑えたなら」

新宮はその表情にはっとする。リョウと海藤は同じだけれど違う。リョウは海藤ほど、強くはなかった。

朝美はふざけはじめる。

「もしかして、新宮さん、りょーちゃんに惚れちゃったんじゃない??でも、譲らないぞ~」

「は??お前、何で今そのキャラ?」

海藤は焦りながら突っ込む。

新宮はにこりと微笑みながら、

「お願いがあるんだ。君たちの部活に私も入れてくれないか?」

海藤の呪いは解けたかわからないが、間違いなく、

今から3人の楽しい日々がはじまろうとしていた。



おしまい

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二番目の呪い 波流 @satomango

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