第31話 真実4
「そんなことより、リョウすまなかった。お前は私を裏切っていなかった」
リョウは優しく微笑む。
「何で僕たちはこんな風にスレ違っちゃったんだろ?ずっとレイには言われていたのに。」
優しい声も笑顔も弱ってはいたけれど、カオの大好きだったリョウだ。
「ずっと私は勘違いをして、たくさんの呪いをかけて、心を閉ざして。すごい長い時間をかけて、生まれ変わったお前を毛嫌いして。今からでもその呪いを私が解く」
リョウは真っ直ぐこちらをみて、首を横にふる。
その時、新宮は気づいてしまった。
自分が海藤ではダメだったように、
リョウも自分ではダメなのだ。
リョウはこの時代のカオしか見ていない。
ならば自分ができることは自分を止めるくらいだ。
駆け出そうとした新宮にリョウは腕をのばす。
「何をしようというの?」
「私は私を止めにいく」
「余計なことしないで。やっとカオの目がこちらを向いたのに」
またも新宮は気付く。
自分もすごくとらわれて歪んでいたが、
リョウも歪んでいた。
きれいで優しくてみんなのことを考えてて、
神よりも聖人だったリョウはもうどこにもいない。
それでもこんな物語は悲しすぎる。
新宮は力ない制止を振り払って、走り出していた。
村の真ん中の大きな屋敷に、
生まれ変わる前の自分はいた。
記憶をたどりながら扉をあける。
こちらを見た眼差しは、すべてのものを
壊しかねない鋭いものだった。
「お前はだれだ!」
前世の自分は、こんなに恐ろしい顔をしていたのかと
少し悲しくなる。
「私はお前だ。何百年も先に生まれ変わった人間のお前だ」
「お前は間違えている。お前が愛したあの男はお前を裏切っていない」
「お前が呪ったあの男は、愛ゆえにその呪いをすべて受け入れる。お前があの男だけ愛していたように、
お前だけを愛している」
前世の自分がなにかをいう前に伝えたいことを口にだす。
「あの子供は、リョウの子供ではない。人間というものは子供を宿すのに10か月もかかるんだ。そして、1年に少しずつしか成長しない。
2年前、リョウはお前とずっと一緒にいただろう。あの子供がリョウの子供のはずはない。
それに、お前は知らないけれど、村の人間は全員あの子供の父親が誰か知っている」
目の前にいた自分は鋭い眼差しのままだ。
「それが本当ならばなんで、あいつは全てを受け入れる?」
「お前が…私がリョウの話を聞かなかったからだ。リョウは何度も二人で話をしたいと言っていた。それを無視してこの村の繁栄に力を捧げた。
私はリョウのこの村を守りたかった。それはリョウを守ることだと信じていた。だけど二人の時間はどんどんなくなって、一緒にいる時間はなくなった」
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