午前三時の小さな冒険

ゆあん

星に願いを

 深夜三時の商店街。静まりかえったアーケードの中、パンイチ姿で全力疾走する女がいた。

 何を隠そう、私である。


「ちくしょうがぁあ! 絶対負けねぇえ!」


 私、磯ヶ馬いそがば廻鈴まわれ、二十歳。現在、女の人生を掛けたランニング中である。

 本日のミッションは、二区画先の土管型公園遊具の中から、あられもないパンイチ姿を誰にも見られずに隣町の自宅まで走り抜けることである。


「流れ星のっ、バカヤロー!!」


 どうしてこんな事になってしまったのか。まずはそこからお話しなければならない。


 ――そうだろ?





 事の発端は数ヶ月前。友人の美香にイケメン彼氏自慢を数時間食らった、飲み会の帰り道である。


「美香のやろう。あたしに彼氏ができないからって、元カレを勧めてくることぁないだろ」


 泥酔一歩手前の千鳥足で、私は地元駅の商店街を悪態を撒き散らしながら帰っていた。

 美香は美人だが男ぐせも悪く、百人斬りを自負する、いわゆるビッチだ。

 一方、私はといえば、年齢=彼氏居ない歴の、こじらせ女子である。

 相反するように見えるが、意外なことに色々相性がよく、男さえ絡まなければ、私達はベストフレンドなのだ。

 それだけに、同情を込めて紹介されそうになったのが、美香の元カレというのだから、全く腹に据えかねるのである。


「でもアツシ、優しいしぃ、廻鈴まわれにピッタリだと思うけどね。それが嫌なら、お星さまにでも願うしかないね。誰か処女をもらってくれますよーに、って」


 ――じゃあなんで別れたんだよ、ビッチが。煽りの切れ味まで百人斬りかってーの。


 そんな屈辱を忘れるべく酒を浴びた結果が、今の私の状態泥酔千鳥足である。


「あーあ、誰か男に介抱されてー」


 大学生になれば、彼氏の一つや二つ、当たり前にできると思っていた。


 見てくれも悪くない、おしゃれだってしてる。スタイルを磨くための努力も、なんならエステだって通ってる。つるつるなんだぞっ。

 なのに、彼氏ができない。お陰様で、今日まで処女を温めてきてしまった。

 このまま油断していたら、あっという間に二十一歳である。そしてその先には、怒涛の就職活動が待ち受けている。努力して磨き上げてきた裸体を誰にも披露する事なく、華の学生生活が終わってしまうのだ。それがたまらなく、悲しい。


「ったく。『乳見せろ』くらいのこと、言ってこいってーの」


 とはいえ、その原因が自分にあることも、わかってる。


 男勝りの、男女。

 男兄弟に囲まれたスポ根父子家庭で育った私は、幼少の頃から勝ち気で素行が悪く、どうもいまいち女らしさというものが足りないらしい。そのクセ、部屋はピンク一色、未だに毎晩少女漫画に悶える脳内乙女体質だから、余計にタチが悪い。


 頼られたいわけじゃない。

 本当は甘えたい。


 そんなことばかり言っていたら、こんな状況になってしまったのだ。おかげで私の口癖は「リアルなんてクソゲー以下だぜ」になってしまった。


 そうこうしている内に、よろめいた足がもう片方の足を蹴り飛ばし、何もない所ですっころんだ。起き上がる気力もおきず、そのまま大の字で天を仰いでいた。

 なんてこったい、私の心なんてつゆ知らず、満点の星空である。

 私はそれをぼーっと眺めていた。 


「あー。起きたら『男と一緒に裸で寝てました♡』とかなったりしねぇかなー。朝チュン、ってか。もーいーよ、この際、なんでも」


 そうして睡魔が襲ってきて、いつの間にかに瞳を閉じていた。


 流れ星が、流れた気がした。





 ――やたらと寒いな。


 眼を覚ました私は周囲を見渡し、そして飛び起きた。


「!?」


 目の前には、見慣れた銭湯の入り口があった。明かりは全て消えているが、間違いない。駅から自宅に抜ける裏道にある、近所の老人御用達の老舗銭湯である。


「どうしてこんな所に」


 そうして、寒さに思わず腕を組んだ瞬間だった。


「ん? この感触――」


 それは、私が女である証拠。唯一自慢できる、小さいながらも形が良い、自称美乳のおっぱいの感触だった。


「って服着てねぇー!?」


 私は即座に座り込んだ。こんな時しかしないような、女の子座りである。


「いったい何が起きてんだよ!? てか服どこよ!?」


 しかし見渡せど、服は見当たらない。どうやら私は下着姿で、ここ老舗銭湯の前で爆睡ぶっこいていたようなのである。


「なんでだ。どうして。どこに服おいてきた。……全然思い出せねぇ」


 すでに空は赤らんでいた。もうじき、登ってきた太陽が路地中を照らし出す頃である。このままでは、大切にしてきた乙女の柔肌が白日の下に晒されてしまう。そしたら私は変質者だ。


「帰らなきゃ……これは絶対、帰らなきゃ」


 私は脳内で最短ルートを瞬時に計算した。昔から地図の物覚えだけは良かったのだ。後は、帰るだけだ。地図が読める女というアイデンティティが、こんな所で役に立つとは。男にモテるために使いたかった。


「迷ってる暇はない。やるしかない!」


 私はそういって、入り口側に立てかけてあったのれんを拝借、素早く棒から引き抜くと、女湯を上半身に、男湯を下半身に巻きつけた。 


「おお、股下に『男湯』って意味深じゃねぇか。女芸人みたい。――ってかそんなことどうでもいい! ごめんおっちゃん、今度返しに来るから!」


 私は最低限の装備「のれん」を身に着け、自宅まで全速力で走った。




 それからというもの、私の体には、時々、おかしな事が起こった。

 気がつくと、外で寝ているのである。それも、ほぼ全裸で。


 ある時は駐車場、ある時はコインランドリー。寿司屋のカウンターの上だったり、小学校の男子更衣室だった時はいろんな意味で戦慄した。


 さらにやっかいな事に、どんどん遠くなっているのだ。


 最初の銭湯は二百メートル程度の近所だった。続いてコインランドリーは五百メートル。その距離は伸び続け、前回は五キロを超え、マラソンレベルのランニングを強いられている。


 しかも、それはいつ来るのか分からなかった。

 その日に備えて鍵をかけ、チェーンもして、脱ぎにくいボタンのパジャマからスウェット、ジャージに至るまで、あらゆる手段を試した。

 しかし、結局は無駄だった。「その日」が来ると、私は決まって、マッパで外に寝転んでいるのだった。

 


 そして今日である。

 眼が覚めた私は、目前の灰色の壁を見るやいなや、とりあえず「知らない天井だ」と言ってみる。それくらいの心持ちの余裕はある。

 どうやら、土管の中らしい。横に寝せて下半分を地面に埋めてある、公園によくある感じのものだ。私はその地べたに仰向けで寝ていたらしい。背中に小ぶりついた土が実に気持ち悪い。


「今日の装備品は、と……」


 こういう時、私はまず身につけている物の確認から始めるようにしている。なぜなら、毎度毎度、着用物はちょっとだけランダムだからだ。

 本日の装備品は、数年前に高校の女友達と買った勝負パンツである。化粧慣れしてない学生の化粧が派手でヘンテコになってしまうように、不器用に色づいた乙女が選んだ、無駄にエロい仕様。Tバックのくせにこれでもかとフリルがついていて、「ショーツのラインがパンツにでないんだよ♡」目的でも使えない困ったちゃんだ。ちなみにどんなハードなプレイにも耐えるという誰得強度もウリらしい。当然未使用だ。どこに仕舞ってあるのか自分でも思い出せないのに、こういう時はバシっと決めてくるから困る。そして、残念ながらブラは着用していなかった。


「一段と条件が悪いな。このストッキングとか、何に使うんだよ」


 装備品には、プラスアルファのおまけがついていることがある。それは冬用のニット帽だったり、ふかふかマフラー、片方だけの白ニーソだったりとたいてい役に立たない。今夜は自然色ストッキングだ。見た目はマッパと変わらず、足の滑りが無駄によくなることを確認して、早速脱ぎ捨てた。公園に遊びに来た近所のガキが土管の中でこれを発見したら何を思うだろう。

 土管から顔を出すと、周囲は真っ暗。時間帯は深夜三時と言った所か。これなら、人に発見されるリスクはまだ少ないほうだ。


「お、今日はラッキー」


 そして目前には、風で飛んできたと思われるビニール袋があった。私はそれを拾い上げ、内側があまり汚れていないことを確認すると、底を少し破き、おもむろに被った。


「頼りになるねぇ。赤ちゃん本舗」


 ビニール袋はチューブトップタンクトップのように私の肌に張り付いている。胸元に入っている赤ちゃん本舗のロゴが、私のかわいいレーズンちゃんを上手く隠してくれている。現地調達はバトルロワイヤルの基本中の基本。これで今日は幾分安全だ。何がだ。


「さてっと」


 私は周囲をみまわし、案内板を見つけ、覗き込んだ。だいたいこういう場所には地図が載っていて、場所を把握するのに役立つ。


「げ。隣町じゃん。今日はまた長丁場になりそうだなぁ」


 そこは、私が住む町の隣駅にほど近い公園だった。起伏の多い地形で、その一角にひっそりと佇む公園。見た感じですぐに覚えられそうなルートは、駅前の商店街をまっすぐに抜け、大通り手前で住宅街に抜けるルート。自転車で行っても汗ばみそうな距離を、私はビニール袋とTバックで駆け抜けなければならない訳だ。普通なら、死にたくなるだろう。私も最初はそうだった。経験が私を変えたのだ。悪い方に。

 だが、夜間とはいえ、元から人通りが多い場所はそれだけエンカウント率も高い。可能ならばもっと裏道的でマイナーな通路を選びたい。私は入念な準備体操をしながら、別ルート捜索のために地図を覗き込んだ。幸い、今の所人通りはない。電気が漏れる住宅もなく、自分の呼吸音すらよく聞こえるほどの閑静な住宅街。今ならじっくりとそれを探せる。


 しかしそれもつかの間。背後に視線を感じた私は、胸と股間を手で隠しながら振り返った。


「……なんだ、わんこかよ。しっしっ」


 そこにいたのは、大型犬だった。首輪につけられたタグが月明かりにキラリと光る。


「残念だけど、今はあーたにかまってやる暇はないの。急いで帰らないと、人間のオス共にこのセクシーな尻を見られちゃうんだよ」


 そういって無駄に尻を突き出す。うん、この角度、なかなか色っぽいんじゃないか? 廻鈴まわれ的にポイント高いー☆、みたいな。


「っつー訳だから、さっさとお家に帰り……ん?」


 そうして振り返ると、わんこがちんちんをしながら、お目々をギラギラと光らせていた。



「追っかけてくんじゃねーよぉ!」


 いくらオスでも犬畜生に初めてを捧げる気はない。身の危険を感じた私はすぐさま逃げだしたが、わんこも追って来た。ルート確認もままならならない内に全速力で走り抜ければ、いつの間にか商店街にでてしまっていた。

 

 ――こうして、冒頭の私が出来上がるのである。


「ちくしょうがぁあ! 絶対負けねぇえ!」


 すでに戦いは数分に及んでいる。私をハートマークで追いかけるこのわんこ、よくよく見ればドーベルマンである。警察御用達のハイスペックわんわんが見せる本気ダッシュは並ではない。すでに数度飛び込まれ、おかげで上半身装備「ビニール袋(赤ちゃん本舗柄仕様)」は無残にも破り脱がされてしまった。もはや私に残されたのは、無駄に空気抵抗値の高いTバックのみ。


「あれは! まずい!」


 前方を見れば、スナックの看板。深夜営業も行っている個人商店なら、今まさに男性客が出てきてもおかしくない。そうすれば、私の人生が終わる。


 道を変えるか? 

 だがそれも容易ではない。腕が風を切る音すら聞こえる全速力のままじゃ、横道に入れず壁に体当たりしてしまうだろう。

 じゃあ速度を落とすか。そうすりゃ今度はみなぎったワンワンに飛び込まれて、餌食にされてしまう!


「こうなりゃ、やってやる!」


 私は全身の神経を研ぎ澄まし、地面を蹴った。上半身から路地に突っ込み、そしてダイブロール。

 そして。

「これでも喰らえ!」


 起き上がり様、飛び込んできたわんこの腹に両足を添え、そのまま巴投げのように後方に放り投げる!


「きゃいん!」


 わんこははるか後方まで吹っ飛び、地面をぐるぐると転がっていった。


「おとといきやがれってんだ!」


 幼少の頃、父と兄に取っ組み合いの相手をさせられた私が身につけた、受け身を取りながらの反撃技。これがこんな所で役立つなんて。私は当時やっていたように、中指を立てて誇らしげだった。


「誰だ! 犬っころいじめてんのはぁ!!」


 犬の悲鳴を聞きつけてか、スナックの戸がヒステリックな音を立てながら開かれた。中から怖そうなおっちゃんが出てくるのが見える。


「やべ!」


 路地にさっと身を隠し、そして再び走り出す。追いかけられたらすぐ見つかってしまう。幸いにも方角は間違っていない。


 しかし道が良くなかった。


「まじか」


 路地の終わり、線路沿いの一通道路に出る。線路沿いの道路は、この時間でもタクシーやら何やらでなんだかんだ人通りがある。さらに街灯が完全整備され、私がマッパなのがモロバレになっていまう。

 しかし、今更引き返す訳には行かない。あのおっちゃんに見つかったら、いったい何をされるかわからない。きっとエッチな命令をされて、めちゃめちゃ♡にされるのだろう。


 何か、方法はないか。そう思った時だ。


「あれは!」


 前方の電柱の下に、明らかに乗り捨てられたと思われる自転車が持たれかかっている。これはチャンスだ。絶対絶命のバトルロワイヤル、窮地を救うのはいつだって乗物あしなのだ。


「さっそく頂き!」


 足早に自転車まで駆け寄り、その勢いを利用したまま自転車のハンドルを押し込む。すると自転車は私の勢いについてくるように動きだす。やっぱり、鍵がついてない!


「これでいける! よっしゃー! ――って、イターイ!!!」


 サドルに跨った瞬間、股間に激痛と気色の悪い感触が同時に押し寄せた。何事かと立ち漕ぎのまま股を覗き込めば、本来あるはずのサドルが、そこにはなかった。


「ったく誰だよ! サドルをブロッコリーに変えたやつは!」


 植え付けられたブロッコリーは私の体重によって無残にも折れ、残った茎部分も奥まで押し込まれて、よくわからない絵面になっていた。


「でもこれでしばらくいける!」


 まるで競輪選手のそれのように尻をたかだかと上げ、全速力で漕ぎ回す。風を切る音と悲鳴をあげるギアが絶妙なハーモニーを奏で始め、私の肉体も精神もハイになっていく。

 速度に狭窄する視界の中、遠く向こう、幹線道路が見える。あの道はたしか、私の地元駅に続く主要道路。看板から察するに、家の数百メートル先の交差点に違いない。その手前の道を左に折れれば、私の家がある住宅街へ続く小道だ。そこまでくれば、もう慣れたものだ。

 

 私はようやくの帰還にテンションが上がり、更にギアを上げた。

 そしてその時―― 


「えっ――」


 私の体は宙を舞っていた。直後に、いびつな金属音が響き渡る。上下逆さまの視界の中、ちぎれたチェーンが車輪に飲み込まれていく様が見えた。


「やばっ――」


 このままでは地面に叩きつけられる――。


 速度も早い。そして相手はアスファルト。剥き身の私が叩きつけられれば、助からない。


 私はこのまま終わってしまうのだろうか。

 愛した男にも見せてない清い体を、こんな事で傷ものにしてしまうのだろうか。

 そうしたら私は、きっと裸を見せられないまま、女の人生を終えていくんだろうな。

 


 ――私の人生、しょせんこんなだったんだ――




「――んなわけあるかぁあ!!」


 私はその時、父親に何度も本気で背負投げされたことを思い出した。

 刹那、空中で体をよじり、回転の勢いを殺しながら膝を折ると、


 Tバックを一気に脱いだ――


「うおおお!」


 そしてTバックを握りしめた私は、腕を伸ばし、それを振りかぶった。


「見せてみろ!」


 まるで投げ縄が獲物を捉えるが如く、Tバックの紐が駐車禁止ゾーン表札の付け根部分に絡みついていく!


「――お前の強度を!」


 Tバックの紐がピンと伸びる。

 フリルが弾け飛ぶ。

 私の関節が軋む。

 ポールがしなる。

 私は反動でその周りをぐるぐると廻る。

 


 ――そして、着地。


「はぁはぁ……」


 助かった。


 幸いにも、無傷。最後の装備品「Tバック」は己の使命を果たし、無残な姿になってしまっている。かわいいフリルはちぎれ、紐部分だけが残っている。勇敢な最後だった。


「……お前って奴は……」


 見上げれば、すぐそこには見慣れた路地があった。ここから先は、ここに住む住人しか通らない。隠れる場所も、十分にある。


 私は帰ってきたのだ。今日も、純潔を守りながら。


 私はしゃがみ込み、戦友を静かにそこに置いた。少し歪んだ駐車違反のポール。それがお前の墓標だ。


「お前の事は、忘れないよ」


 そして私は、マッパで、暗闇に消えていった。



 後日。


「んでー、んじゃあどんな下着だったらいいんだよぉ、って聞いたわけー」


 飲み慣れた居酒屋。いつものように美香の男自慢を聞いている。ちなみに先日とは違う男の話らしい。私は話半分で枝豆を貪り、ビールで流し込んでいる。


「そしたらサー、『俺はTバック一筋だ』とか真顔で言うんだもん。なくなーい? どう思うー? 廻鈴まわれぇ」


「……いいんじゃないかな、Tバック」


「え、うっそー。どこがー?」


「んー、そうだなー、だってさ」


 私はあの日、あの場に残してきた戦友の事を思い出していた。

 私を守ってくれた、戦友。

 奴の名誉のために、私は言わなければならないのだ。


「頼れるじゃん。Tバック」


 そして私は意味もなく、古びた白熱灯に向かってグラスを掲げた。

 それを見た美香は、意味分かんないーとか、つかったことあんのかー、とか、布面積少なくてむしろ頼り甲斐なくなーいとか色々言っていたが、私にはどうでもいい事だった。


「そんで、どうすんの」


 そうして聞き流していると、美香がマジトーンでこちらを見つめる。女でもドキッとするいい顔だ。


「男。紹介しよっかって、言ってんの」


「別にいいよ、私は」


 開き直った私に、美香はやれやれとわかりやすく溜息をついた。


「んじゃーお星さまにでも願うわけ? 少女漫画の見すぎだっての」


「いや、それはない」


 きっぱりと否定する私に、美香が星のように眼をパチクリとさせる。



「星に願うと、ろくな事ねーよ」

 

 


 終わり

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