ちいさなほし

@nyraffatohoello

ちいさなほし

そらのかなたで、声がしました。それは、ほしたちの声でした。

ほしたちはうわさをしていました。ほしのいのちのうわさでした。


「きみたちきいた?ほしのいのちのおわりのうわさ。」


ほしたちの毎日は途方もなく長かったので、そのようなうわさが流れても、ほしたちはおどろきませんでした。


「きみたちきいた?ほしのいのちのおわりのうわさ。」

「きいてない。」


ほしたちはうわさをしていました。ほしのいのちのうわさでした。


「きみたちきいた?ほしのいのちのおわりのうわさ。」

「きいてない。」


うわさは、ほしたちからほしたちへと、またたく間にひろがっていきました。


「きみたちきいた?ほしのいのちのおわりのうわさ。」

「きいてない。」


ほしたちは、そのうわさをそれとなく聞いて、あわてるもなく、ただぼんやりとすごしました。


「きみたちきいた?ほしのいのちのおわりのうわさ。」

そのうわさを聞いたほしの中に、ひとつ、うわさをしんじないほしがありました。うまれたばかりの、ちいさなほしでした。


「そんなはなし、あるもんか。ほしのいのちはおわらない。」


ちいさなほしは、うわさを否定して見せました。そうして、ときおり見えなくなるじぶんのかがやきを、見ようとしたのです。

ほかのほしたちは、たいして気にしませんでした。途方もなく長い毎日を、ただぼんやり光っているのにいそがしかったからです。

しかし、あるおおきなほしがこたえました。


「そうおもうなら、そらのかなたのそのかなた。あまのがわへといきなさい。」

「なんで?」

「そこには、きみのいうことをきいてくれる、やさしいほしがいるからさ。」


おおきなほしは、やさしく言いました。でも本当は、このやかましいちいさなほしを、どこか遠くへやりたかったのです。


「わかった。ぼく、いってくるよ。」


ちいさなほしは、答えてすぐに、そらのかなたのそのかなた、あまのがわへと歩き始めました。

その途中、ちいさなほしは、いろんなほしたちに出会いました。ほしたちに出会うたびに、ちいさなほしは、じまんげに言って見せました。


「ぼく、そらのかなたのそのかなた、あまのがわにむかってるんだ。」


ほしたちは、そのあかるい声を、ただぼんやりと聞いていました。途方もなく長い毎日を、ただぼんやり光っているのに忙しかったからです。

しかし、ほしたちの中に、答える声がありました。


「なんだい、やめろ。そんなことしても、なんのいみもないぞ。」


その声は、ほしたちの中にまぎれていて、どのほしが出した声なのか、ちいさなほしにはわかりませんでした。

けれども、ちいさなほしは答えました。


「しらないやい。ぼくはしたいからしてるんだ。きみにとめられても、へっちゃらだい。」


そうして、ちいさなほしはまた、歩き始めました。空の彼方に、夜はありません。ちいさなほしは、歩き続けました。

けれどもじきに、ちいさなほしは、歩くのをやめてしまいました。さっき言われたことが、こころにはりついていたからです。


ちいさなほしは、なきだしました。ひとりぼっちがさみしいから。

ないてないて、なみだはそらへとおちていきました。


おちたとき、ぽつん、と、ちいさな音が聞こえました。

ちいさなほしは、はっとして、じぶんのあしもとをのぞきこみました。

そこは、あまのがわでした。

あるきつづけて、ちいさなほしがきづかないうちに、あまのがわへとたどりついていたのです。


あたりをみまわすと、そこには、きれいなみずや、かわいいはなが、ふわふわとうかんだり、さらさらとながれたりしていました。それは、とてもきれいなものでした。


ちいさなほしはなみだをふくと、あまのがわへととびこみました。

つめたい、とちいさなほしはわらいました。


そらのかなたのそのかなた。あまのがわには、ほかのほしたちはいませんでした。

ちいさなほしは、そこで、いつまでもあそんでいました。


そうだ、みなさんにはおはなししていませんでしたが、あのうわさには、つづきがありました。

それは、つぎのようなものです。


きみたちきいた?ほしのいのちのおわりのうわさ。

そらのかなたのそのかなた、あまのがわまでむかったほしは、いのちのおわりをむかえるんだって。

あまのがわのみずは、そのほしをのみこんでしまうんだって。


ちいさなほしは、いまでも、あまのがわのなかで、ちいさくひかっていました。

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