【おまけ】ある女騎士の独白




 もう少しうまくできると思ったんだけど…………そんなに現実は甘くないね……


 ありゃ……今にも泣きだしそうな顔しちゃって……いつもは意地っ張りで無愛想なのに……




 ちょっと喋るのもきついので……とりあえず抱きしめてあげた。いつもなら嫌がるんだけど、今は大人しい。




 ――――ああ、やっぱりそうなっちゃうよね……変なところ真面目だもんね。あんたのせいじゃないって言ってあげたい。




 …………でもそれは自分じゃない。その役目はあの人たち……




 名前を必死に呼ぶ声が聞こえる……でももう返事もできそうにない……ごめんね……


 代わりに笑顔を向けよう……笑顔でいれば大抵はうまくいくんだから。いつも言ってたでしょ……?




 ……今いる空間が壊れそう……気づいてないなぁ…………まったく、手間のかかる弟ね……




 残ってる力も少ない……あんただけでも移動させなくちゃ…………








 ………………よし、うまくいったみたい。笑顔で送り出せた、と思う……よくやった自分。




 崩壊が始まった……でも不思議と怖くはない……きらきらしてて綺麗……




 ――――こんな時だからこそ……よくわかるのかなあ……肝心な時に役に立たないくせに……




 ………どん底にいるあんたを引っ張り上げるのは……あの子か……


 そっか……あの子と出会うんだね。いつか会わせようと思ってて……結局できてなかったけど、そっか。


 自分にはできないとわかって……ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ、寂しいし悔しい気がするけど……でも……




 あんたが前に進めるなら……私は―――――――



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ある少年の記憶の欠片 阿季 @kareraki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ