後編 狼の必需品は、羊の皮。

 

 「健太、ちょっとこいや」

 「何ですか、兄貴」

 「お前、特殊メイクをやってたよな」

 「才能ないですよ。だから、ここに居ますから」

 「まぁ、いい。殴られた感じに見えれば」

 「何のために?」

 「いいから、やれ」

 「はい」


 健太は、メイクに必要な道具を調達するとすぐさま取り掛かった。

 

 「これで、どうです?」

 「上手いじゃないか、それらしく見えるぜ」

 「うおっす」

 「じゃ、よりリアルにするため、俺を殴れ、手加減するなよ」

 「いやいやいや、そんなこと出来ませんよ」

 「仕事だ、仕事」

 「仕事って?」

 「お前には関係ない、やれ」

 「じゃぁ、行きますよ」


 バーン。


 「はぁ~、そんなに俺が憎いか…、痛てぇ~」

 「すいません」

 「いや、いいんだ。これでいい物でも食べろ」


 五十嵐は健太に二万円を渡して、事前に調べて於いた一人住まいの貴子の部屋に向かった。その途中に公園を見つけると転げ回ったり、地面に服を強く擦り付けて、メイクのリアル感を出した。


 深夜、貴子の玄関ドアに何かが倒れ掛かる音がした。


 「何?」


 恐る恐る玄関に近づいた。ドアスコープで見ても何も見えなかった。しかし、人の気配はした。


 「誰?誰なの?」

 「お、俺だ」


 貴子は、尋常でない五十嵐の声に動転し、慌てて鍵を開けた。そこには、殴られたのだろう五十嵐が座り込んでいた。

 なぜ、私の自宅を知っているの?

 そんな疑惑は、目の前の壮絶な光景に、あっさりと打ち消された。


 「大丈夫?」

 「い、痛てぇ」

 「兎に角、入って」

 「すまない」


 冷静であれば、直ぐに分かったはずだが、事務職の貴子には見慣れない光景に動転し、真偽の判断など出来ないでいた。

 五十嵐は、メイクがばれないように、近寄る貴子を遠ざけながら言った。


 「すまない、シャワーを借りていいか」

 「ええ」


 許しを得た五十嵐は、逃げるようにバスルームに駆け込んだ。

 傷口が剥がれないように気を使いながら、血糊や汚れを丁寧に洗い流し、少し時間を潰した。そして、バスルームから貴子に声を掛けた。


 「貴子、すまない、何か着る物はないか?」

 「着る物って言ったってぇ」

 「何でもいいさ」


 生真面目な女の独り暮らし。男に着せるようなものはなかった。辛うじてあったのがバスローブだった。


 「これしかないけど」

 「ああ、ありがとう。あっ、そうだ、電気を消してくれないか」

 「どうして?」

 「男に恥を掻かせるもんじゃないぜ」

  

 貴子は言われた通り、常夜灯に切り替えた。部屋が暗くなるのを確認して、五十嵐はバスルームから出てきた。

 薄明りの中でもピチピチのバスローブに包まれた五十嵐が伺えた。


 「ふふふふ」

 「何が可笑しいんだ」

 「ああ、ごめんなさい。でも、その恰好をみると…」

 「ひどいなぁ」


 貴子は缶ビールを瓶に開け、五十嵐に渡した。五十嵐はビールを一気飲みした。


 「大丈夫?」


 五十嵐は、慌てて口内の傷に沁みた様に痛がって見せた。

 五十嵐は、ことの経緯を貴子に耽々と語った。貴子は黙ってそれを聞いていた。


 「…と言う訳で、おやじは組を抜けることを許してくれたよ」

 「そう、良かったわね」

 「ああ、おやじは許してくれたが兄貴がキレやがって、このざまさ」

 「何て、酷いことを」

 「仕方ないさ、俺が悪いんだから」

 「ううん、あなたは悪くないわ、真面目になろうとしているんだから」


 五十嵐は、俯くと泣いて見せた。


 「どうしたのよ?」

 「俺、優しくされるのって、ないから」

 「(五十嵐)大樹」


 そう言うと貴子は、俯く五十嵐を抱き寄せた。

 ここまでくれば、流れに任せて一つになるだけだった。五十嵐は、貴子を一旦引き離すと激しく抱きしめた。男と女、非日常の興奮が貴子の理性を払拭した。


 五十嵐の企ては見事に実を結んだ。後は、翌朝、怪我のない姿を見られない様に貴子を熟練の技と体力で甚振り、疲れさせるだけだった。


 翌朝、貴子が目を覚ますと五十嵐はいなかった。テーブルの上に一輪挿しがあり、そのコップの下にメモがあった。

 そこには、ありがとう、昨夜は嬉しかったよ。仕事を探しに行くわ。待っててくれ。後ろ指さされない男として戻ってくるまで。と残されていた。


 貴子にとってスリリングな一夜を過ごした気分だった。その日から、五十嵐からの電話が待ち遠して堪らなくなった。


 二、三日して五十嵐から電話があった。


 「仕事、見つかった?」

 「いや、まだだ…」

 「何か力になれる?」

 「ああ、いや…、大丈夫」

 「何?何かあったのね」

 「いや、大丈夫だ」

 「いいから言って」

 「…」

 「私、隠し事されるのって嫌いなの、だから言って」

 「ああ、実はあにきが…」

 「その人がどうしたの?」

 「おやじは許しても俺は許さないって。仕事が決まったら邪魔をするって」

 「そんな、何とかならないの」

 「なる事はなるんだけど」

 「どうすればいいの?」

 「ケジメの金を寄こせって…、ああ、いいんだ、働いて用意するから」

 「仕事が決まったの?まだでしょ」

 「ああ、でも、面倒に巻き込みたくないから…、何とかするよ」

 「何とかって、どうするのよ」

 「分かんないよ、そんなの」

 「分かったわ、幾らいるの?」

 「何言ってんだ、これは俺の問題だ」

 「もう、私の問題でもあるわ、いいから言って、さぁ」

 「す、すまない。あにきが言うには五十万だって?」

 「五十万?」

 「いいよ」

 「何がいいのよ。それがなければ真面目に生きられないのでしょ」

 「自業自得さ」

 「分かった、私が用意するわ」

 「そんなぁ~。す、すまない。必ず返すから」

 「男なら、簡単にすまないって言わないの」

 「すまない」

 「ほら、またぁ」


 ふたりは、境遇を共用することでひとつとなり、笑い声が込み上げてきた。


 人目のない公園で待ち合わせ、貴子から金を受け取った五十嵐は、健太を食事に誘った。


 「健太、今日は好きなものを食わせてやるぜ」

 「御馳になります。どうしたんすか、偉く羽振りがいいじゃないですか」

 「お前のお蔭でも、ある。だから、遠慮はいらねぇよ」

 「俺のお蔭…、あっ、あのメイクですか」

 「そう言うことだ」

 「またまたまたぁ。兄貴のことだから、怪我をしたからって、女をだました?」

 「まぁな。細かい事は気にするな、さぁ、いくぞ」


 健太は、五十嵐の女を誑し込む才能に憧れを抱いていた。


 貴子は、五十嵐の境遇を憂えていた。金は渡した。しかし、その後の展開が何ら報告されていない。五十嵐への心配は、連絡のない怒りに変わりつつあった。

 そんな貴子の気持ちを盗み見ていたように、五十嵐から電話があった。


 「すまない、連絡が遅れて」

 「どうしてたのよ」

 「あっ、ありがとう。あの金で兄貴の怒りは治まったよ」

 「それは良かったわね」

 「金は必ず返すから。そのためにも、早く働き口を探さないといけないから、あちらこちらに当たっていたんだ。なぁ、喜んでくれるか、仕事が決まりそうなんだ」

 「そ、そうなの?それは良かったわね。で、どんな仕事?」

 「配達の仕事さ。まぁ、助手だけどね」

 「真面目に勤めなさいよ」

 「分かってるよ。で、早く仕事に慣れたいから、当分、連絡が取れなくなるけど心配しないでくれ。人間関係ってやつを作るために頑張りたいんだ」

 「そ、そう、それは大事だもんね」

 「ああ、俺にとっては一番の難関かも知れないよ」

 「短気は損気よ」

 「分かっているって。我慢我慢だろ」

 「そうね」

 「じゃ、落ち着いたらまた連絡するよ、待っててくれるか?」

 「ええ。お金を貸しているもんね」

 「参ったなぁ、ああ、待っててくれ、俺、頑張るからさ」

 「期待しないで、待っていることにするわ」

 「信用ねぇなぁ」

 「はい、信用させてください」

 「おう。じゃぁな」

 「頑張って」


 貴子の怒りはあっさり治まり、胸ときめく期待と希望に変わっていた。


 メールによる近況報告は毎日のようにあった。そのやり取りは、会わずして二人の関係を親密にしていった。一ヶ月程が経ったある日、五十嵐から電話があった。


 「あら、どうしたの?もう、仕事に慣れた?」

 「ああ、何とか上手くやっているさ…」

 「どうしたの?何か様子が変だけど?」

 「いや、大丈夫だ、慣れないことで疲れているだけさ」

 「はいはい、何を強がっているのよ。問題発生って感じよ」

 「わ、分かるのか?」

 「あんた、分かり易よ」

 「そうか。実は問題が出来たんだ」

 「何したのよ、また、喧嘩?」

 「信用ねぇなぁ、俺?そんなんじゃないよ」

 「ごめんごめん。じゃ、どうしたのよ?」

 「会社の業績が悪化して、人員整理の話が噂されているんだ」

 「勤めたばかりなのに?」

 「ああ、詳しくは知らないけど、不当手形を掴まされたみたいで」

 「それでリストラの噂が」

 「ああ、それで助手の俺は危ないって、聞かされて…」

 「何とかならないの?」

 「俺も聞いてみたよ、そしたら運転免許を持っていればって」

 「免許を持っていないの?」

 「持っていない。それに先立つものもないからな。これも自業自得さ、そうなったら諦めるさ」

 「自棄にならないでよ、折角、立ち直ろうとしているのに?」

 「仕方ないさ、ない袖は振れないし、そんな金があったら貴子に先に返すのが男の筋だからな」

 「私のことはいいのよ。それより運転免許があれば何とかなるのね」

 「確実ではないけど、ないよりはましかな」

 「じゃ、取れば」

 「簡単に言うなよ、先立つものがないって言うのに」

 「いいわ、私が出してあげるわよ」

 「何言ってんだよ、幾ら掛かるか知っているのか?」

 「分かっているわよ」

 「しかし、無収入の俺が貴子に借りるなんて出来ないよ」

 「いいから、さっさと免許、取りなさいよ。あんたが免許を取得するのが早いか、会社が耐えきれないかの勝負よ。戦わずに逃げるつもり?それでも男?」

 「言ってくれるじゃないか、面白い、やってやるよ、その勝負」

 「じゃ、あなたは教習所を探すことね。見つけたら連絡して、軍資金を渡すから」

 「すまない、世話ばかり掛けて」

 「乗り掛かった舟よ」


 五十嵐は、いっぱしの女たらし。女性の母性本能を甚振る術は熟知していた。それに貴子は見事に嵌った。貴子にしてみれば、五十嵐は自分がいなければ上手くいかない、そう思うことで自分の存在を感じ、その快感に酔いしれ始めていた。


 免許のやり取りから三日も経たずに五十嵐から、自動車学校のパンフレットと価格表がメールされてきた。貴子は前回と同じ段取りで三十万円を五十嵐に渡した。

 それから数日して自動車学校の看板を前に五十嵐が立つ写真が送られてき、今から学科です、との一文が添えられていた。

 それからは、学科の授業が眠いとか、教習所内の運転での感想、仮免まで進んだ嬉しさなどが送られてくるようになった。

 貴子は何の疑いもなく、五十嵐のメールに応じていた。


 五十嵐は、簡単に手に入れた貴子からの金を豪遊で使い果たしていた。金が底を吐きそうになると給与が遅滞しているとか、借金していた返済日が迫っているとか、何かと理由を付けて、金を無心していた。

 何度か会ってもいた。

 五十嵐の行動に不信感を抱いた貴子は、幾度か問い質した。その都度、貴子は、五十嵐の自分を正当化した高圧的な言動と態度に怯えと不安を抱かされた。

 その後、決まって、捨て猫の様に慕い縋りつかれ、貴子は、心と体を強く求められた。それは刺激的だった。真面目な生活を送っていた貴子は逃げられないでいた。


 交際を密かに続けていた貴子に罪悪感が圧し寄せてきた。

 

 女性警察官とヤクザの許されざる恋。


 仕事一筋だった生活が一変した。もしかしたら自分は利用されているのではないか。いや、一人の女性として彼は自分を愛してくれているはず、そう思う事で自制心を保ってた。


 いけないことをしているとはわかっていても、気持ちを抑えるのは難しかった。そうした貴子の様子を五十嵐が見逃すはずはなく、そんな気持ちを甚振るように要求は大胆になっていった。


 五十嵐は、貴子に「最近、見張られている気がする。自分または組が、捜査対象になっている事件はあるか」と尋ねきた。

 貴子は、五十嵐が以前犯した傷害事件の容疑者の一人であることを知っていたが、答えられるはずもなく、曖昧な返事で誤魔化していた。それでも、しつこく聞き続ける五十嵐に不信感を募り、それは危うさに変化していった。

 流石に鈍感な貴子も、五十嵐の執拗な問い掛けに自らの置かれている立場を考えざる得なかった。


 「捜査が進めば、自分たちの関係が公になってしまうかもしれない。そうなれば、警察官を続けることはできない」


 その裏では、五十嵐が自分を一人の女性として愛してくれているはず、と思う気持ちは正常な認識と葛藤を繰り広げていた。


 ある賭けに出た、貴子は、五十嵐を信じて。


 捜査情報を教えれば、五十嵐は交際の事実を黙っていてくれるのではないか?

 五十嵐が自分との関係継続を望んでいるなら、きっとそうするはずだ。


 まだ見習いの貴子にはたいした情報は得られない。でも、自分たちの関係がバレては困る。そこで、上司の目を盗み、こっそりと捜査書類を覗き込んだ。

 思いのほかあっさり情報は手に入り、ホッと胸をなでおろす。踊る心を抑え、すぐに貴子は五十嵐に電話をかけ、事件の罪名、捜査の進捗状況を教えた。


 警察官が容疑者に捜査内容を話す。超えてはいけない一線だった。


 組員の知らないはずの情報をもとにがさ入れがなされた。

 それが無駄に終わった。

 万全を期していた。それが水の泡になった。

 署員の成功の要は結束。誰もが疑わないでいた事実。

 どう考えても作戦にミスはなかった。だが、破綻した。


 作戦にミスがない以上、情報の漏洩しか考えが及ばなかった。あり得ないことだった。仲間を疑う苦悩、それは、当たり前のように徒労に終わった。


 一線を越えてしまった貴子に明らかな弱みができた。それを放置する程、五十嵐は甘くなかった。その日を境に五十嵐からの要求はさらにエスカレートした。


 捜査情報を尋ねるだけでなく、小遣いをせびるようになった。

 額は数万円から数十万円とどんどん膨れ上がっていた。貴子が五十嵐に貢いだ金額は、総額で100万円にものぼった。もう、限界だった。金の切れ目は縁の切れ目。虚しい現実を目の当たりにした。


 やはり、自分は利用されていただけなのか?


 貴子の気持ちは急激に冷めた。女性の心は秋の空。厄介な事に巻き込んだのは五十嵐だ。私が悪いわけではない。そう、自分に言い聞かせた。

 一旦嫌気がさせば、呆気ない程、潮目が引く。男性程、執着心を後に引き摺らない。交際を一方的に解消した。

 五十嵐もまた相手が相手だけに深追いは、身を滅ぼすことを熟知していた。


 新宿署の「ともちん」にとっては高い授業料となったが、本来ならばこれですべて闇の中、終わる話のはずだった。しかし、想定外の出来事が起こった。


 五十嵐の舎弟の佐藤健太が美人局の容疑で逮捕された。

 その取り調べで、追い詰められた健太は苦し紛れに、「俺の兄貴はヤクザで、その女は刑事だぞ」と見栄を張った。

 誰もが最初は、耳を疑った。

 自慢気に馬鹿げた巨勢を張る健太を落とすことぐらいは、ベテランの捜査員にとっては、赤子の手をひねるように容易い事だった。

 詳細を聞き出すとすぐにその女の刑事に該当する対象者が浮かび上がった。

 真面目を絵にかいたような女性警察官。その父は、現職の警部。

 当然ながら、捜査は極秘に行われた。

 新宿署は、貴子について張り込みも含めた捜査を開始した。


 警察署内部の不祥事。


 しかも、その親は模範の叩き上げの警察官。捜査は慎重の上にも慎重を期した。


 捜査過程で新たな事実が発覚する。


 内偵捜査が入り、貴子の行動確認がなされていた。その最中に現職の警視庁の警察官と貴子が一緒にホテルに入るところを目撃・確認された。その現職警察官は、妻子持ち。いわゆる不倫だった。


 職務規定違反を犯すほど男に入れあげたのに、結局、利用されただけだった貴子。

 ポッカリと空いた心の穴。その穴を美味しく頂こうとする者の欲望には、見逃せない上物に映った。貴子にしては、他の男性と付き合うことで、心と体の寂しさを埋めようとしても致し方ないことかもしれない。


 一度、落ちた者には試練が付き纏う。

 急がば回れ。

 心の隙を衝かれぬ事。


 貴子の落ち込む姿は、飢えた狼には美味しい餌に見えた。優しさと言う隠れ蓑に身を包み、親身になって相談者になる。

 言えない苦しみ、犯した罪悪感を脱ぎされる時間をたっぷりお膳立てし、浸透するのを待つだけでよかった。

 その罠、心の隙には得てして、羊の皮を被った狼が近づいてくるもの。冷静でいられない時こそ、神は、冷静さを保ち客観的に物事を見られるかの試練が与えられる。この試練こそが、今後の生き方を左右することになる。


 暗いと文句を言うより、進んで灯りをつけましょう、と誰かが言った。

 

 貴子は、明らかに灯りの灯し方を誤った。


 縋る事によって現実逃避を選んでしまった貴子は、底なし沼に足を踏み入れた。


 警視庁は、捜査線上に浮上した貴子に事情聴取した。貴子は自分を清算するように、すべてを認めた。その結果、警察内部からの秘密漏洩が発覚した。


 新宿署の女性巡査・高城貴子、23歳は、交際していた難葉会三次団体の暴力団組員の五十嵐大樹に捜査情報を漏らしたとして書類送検された。 

 警視庁は、貴子に停職六ヵ月の懲戒処分を課す。同日付で貴子は、依願退職した。


 その後、貴子は実家に引きこもった。

 暗い部屋の中、ひとり、自分の犯した過ちと後悔と向き合う時間を過ごすことになる。過ちを犯した者が思う事、それは、時間よ、戻れ。その願いは叶わない。

 走馬灯のように押し寄せる思い起こしたくない過去の出来事と向き合い、自分自身を責め立てる。与えられた試練の向き合い方を誤ったツケを貴子は、新たな孤独と言う牢獄で過ごすことになった。

 確かなのは、もう、父のような立派な警察官になるという夢が叶うことはない、と言うことだった。




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アイドル婦警とイケメン893ー落ちこぼれの面々(前・後編) 龍玄 @amuro117ryugen

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