第113話:エロ爺は死なず

(※ユラ視点)


「我、盟友たるエンシェント・エント・・・、その姿をあらわしたまえ!」


ムア爺の呪文に辺りの樹木が反応し、私たちの周りを緑色の美しい光が包んでいく。


その時、私は気付いてしまった・・・


「ムア爺・・・、右腕が・・・」


・・・


そう、ムア爺の右腕部分の着物が薄っぺらく、バタバタと風にはためいている。


ムア爺は私に笑いかけて、片目を瞑り話した。


「魔力をだいぶ消費しておっての・・・、いやはや難儀じゃったわい。フォフォフォ!」


ムア爺・・・


私たちを逃すために・・・


私の目頭が再び熱くなる。


「それより・・・」


「これからはお主が彼を召喚するんじゃぞい!」


目に涙をためてムア爺の視線を追うと、そこには見たこともない巨大な1本の樹木がそびえ立っていた。


いや、樹木と言っていいのか・・・


根元は2本の巨大な脚のように二股に別れ、2本の太い枝は腕のように、巨大な幹から伸びている。


そして、幹の中央には、緑色に光る巨大な目が二つ。穴のように開いた巨大な口が開いている。


「ゴオオオオオオオオオオン!!」


ズシーーーーーン!!!!


「まさか!!これが・・・、森の精霊・・・エンシェント・エント!!!」


「うむ。森の守護神じゃい。」


エンシェント・エントが大地を踏みしめる毎に、地面が激しく揺れる!


「ゴオオオオオオオオオオン!!」


エンシェント・エントは、巨大な蛾と化したザリオンに向き合う!


そして、その巨大な枝をザリオンに向けてゆっくりと伸ばした!


バキ!!バキ!!!バキ!!!


まるで雷鳴のように巨大な音が辺りに響く!!


角度をゆっくりと変えた巨大な枝は、ザリオン向けて素早く伸び始めた!


あっという間に、枝はザリオンに絡みつき、そしてその身体を勢いよく放り投げた!!


ドゴーーーーーーーン!!!


すごい勢いで森の奥まで投げ飛ばされるザリオン!!


衝撃波と共に、大きな砂埃が数10m先に舞い上がっている!


「さて、助けにいくぞい!」


ムア爺は私とミナに笑いかけ、リリスの元に走り始めた。


・・・


「すごっ・・・」


・・・


私とミナは顔を見合わせる。


そして再び走り出した小さな老人の背中を見つめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕のパーティは最強の人妻パートさんで成り立っている! とんかつ @info_tonkatu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ