第4話

「ん……んん?」


私が目を覚ました時、まず思ったのは


「ここどこ?」


だった。


和室である。畳の上に布団が敷かれていて、それに私が寝そべっている。


ふかふかの布団には綺麗なアジサイの刺繍がほどこされている。やたらとオシャレだった。


布団を持ち上げる。その拍子に、薄暗い部屋の向こうから差し込む光と、その向こうにいる人影が目に入った。


どうやら私が起きたことに気づいたのか、その人影が近づいてくる。


「起きたんだ? よかった」


やや低い声は穏やかに響く。大人の男性だ。たぶん、私よりいくつか年上だろう。


その人は、何故か甚兵衛を着ていた。


胸元をぱっくり広げた、だるだるの着崩し方をしている。それはいいのだけど、異様な風体なのはそこだけじゃない。


金髪に碧眼、180センチはあろうかという高身長と、日本人離れした容姿だ。


「君、どこから来たの?」


好奇心満々という感じで、こちらを覗き込む。私は怖気づいて、ぱくぱくと口を開け閉じするしかない。


私が目を白黒させているのが不思議なのか、彼は首をかしげる。そして、自らの胸元を見下ろして、いたずらっぽく笑う。


「あ、やべ。みっともねーところを見せちまった。野郎の胸板なんか見てもつまんねーよな」


広げていた胸元を閉じる彼の手は、ゴツい。たぶんサイズ違いなせいでぴっちりとしている甚兵衛の隙間からは、外人らしく筋肉質な胸板がむっちりと覗いている。


よく見ると、下半身はミニスカみたいになってる。


太ももが根本付近まで丸見えなのだ。


何かのスポーツでもやってるの? と思うほどに盛り上がっている太もも、そこから伸びる脛はしなやかで、多分、足は相当に速いんじゃないだろうか。


ゴツゴツした印象の男性だが、その顔はやたらと爽やかだった。ショートヘアと、透き通るような白い肌が、たくましさと清潔さを共存させている。


やたらピチピチ感のある服装を除けば、まぁ、イケメンだった。


なんなんだ、このセクシーな外人は。


「あ、いい忘れてたな。俺の名前はマイケル・南井だ。マイケルって呼んでくれ」


「……はぁ」


「お」


「え?」


「初めてしゃべったな」


この数分で分かったことがある。


この人、外人かと思ってたけどハーフっぽい。そして、陽キャだ。


「……あ、私の名前は」


そこまで言ったところで、がたん、と部屋の奥の方から音がしたのが聞こえた。


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やまびこの呼び声が聞こえる 阿井上男 @cpxmx729

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