お姉ちゃんと赤ちゃん

天雪桃那花(あまゆきもなか)

第1話 望まない妊娠

 寒い寒い冬のことです。私は仕事中に倒れ病院に搬送されました。

 起きた時には自分がいるのが真っ白い病室だったのでびっくりして。横を見るとお姉ちゃんがパイプ椅子に座ってうたた寝をしてた。


 お姉ちゃんの背後の窓の向こう、日がとっぷり暮れてライトに照らされた雪がチラチラ降る様が見えている。


「お姉ちゃん」

「んーっ。あっ祈李いのり。意識戻った? 良かった!」


 私が倒れた連絡を受け家で仕事をしてたお姉ちゃんが病院に駆けつけてくれた。


「びっくりした。倒れた原因は貧血だって。あとね、お医者さんから聞いたんだけど……。祈李いのり、妊娠してるんだよ?」

 お姉ちゃんの声は途切れがちで言いにくそうだった。私のことを心配そうに見てそれから私の背中をさすってくれた。

「……うん、知ってた。赤ちゃんが出来たことは分かってた。でも、でも私産まないから! お母さん達に言わないで」


 お姉ちゃんは哀しんでる顔をした。

 なんで?

 なんでお姉ちゃんがそんな顔をするの?


 望まない妊娠をしてしまった私の両手を握り真剣な顔でお姉ちゃんが言った。


「赤ちゃん一緒に育てよう?」

「でも私、ちゃんと産んで育てられるかな」

「本当は産みたいんだよね?」

「……分からない」

「相手の人、訳ありなんでしょ?」

「うん、奥さんいる人」

 自分から告白しちゃった。

 お姉ちゃんに何もかも。

 勝手に涙が流れてきてお姉ちゃんは私の背中をさすってくれた。


「私も協力するから。せっかく授かったんだもの。赤ちゃん、家族みんなで育てようよ」

「う……ん」


 私は姉に押し切られる形で出産をすることにした。





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