魂の表現型
デッドコピーたこはち
第1話
「どんな
「ああ?」
急に話を変えたジェイクに対して、俺は首を傾げた。
デカイ山を当てた俺は、自分の古くなった
「ハッカーはハッキング用の装備をつけるし、サラリーマンは仕事用の装備をつけるだろ?軍人なら軍用、医者なら医者用の
「まあな」
俺は頷いた。
ジェイクがこうして無駄話をしてきた時のコツは最後まで話を聞くことだ。途中で遮るとジェイクは途端に不機嫌になり、店を閉めてしまう。逆に、適当に相槌を打って、話を聞いていれば、ジェイクは機嫌が良くなり、運が良ければ商品の割引をする事すらある。俺はジェイクの話に付き合うことを、『割引クーポン』と呼んでいた。
「ニイちゃんが欲しいのは
ジェイクは口角泡を飛ばし、熱弁を振るった。
「なるほど」
俺は頷いた。
正直にいって、レールガンもロケットランチャーも俺にとっては過剰な武器だった。俺が腕に武器を仕込みたいのは、武器を失った時の最終手段が欲しいからだ。こちらに武器がないことに油断して、近づいてきた敵に一発かませればそれで十分。できればショットガン、せいぜいサブマシンガンが良い。
「生身の肉体ってのは生得的なもんで自分で選べるものじゃない。だが、
ジェイクは右手でショーケースの天板を叩いた。店内にドンッという音が響き、ショーケースの天板にヒビが入った。
「街に溢れる量産型の
ジェイクは左手でショーケースの天板を叩いた。店内にドンッという音が響き、ショーケースの天板に入ったヒビが大きくなった。
「そうだな」
俺は頷いた。
今日のジェイクの無駄話はやけに熱が入っている。嫌な予感がしてきた。
「だから、ニイちゃんにはコイツを勧めよう。加速抜刀ユニット『伊達&酔狂』だ」
ジェイクはショーケースの側面についている赤いボタンを押した。すると、天井に鎖で吊られていた
「いやいや、なんだこれ!」
「カッコイイだろ?」
ジェイクは俺にウインクを飛ばした。
「そうじゃねえ!」
「ああ、そうか。こっちの青いカタナは『伊達』。音速すら超える電磁加速によってイアイの威力を各段に上げる。こっちの赤いカタナは『酔狂』こっちは空砲を使う炸薬式だ。排莢方法が滅茶苦茶カッコイイ。何時間でも見てられるぞ。両方とも最新技術を使って職人が造った逸品だ。名刀と加速抜刀、超振動切断システムが三位一体となったこの
ジェイクはうっとりとした視線をこの
「スペックが知りたいんじゃねえ。俺はショットガンを腕に仕込みたいだけなんだよ!サムライごっこがしたいわけじゃねえ」
「サムライごっこじゃない!この
「なら余計に俺には使えねえじゃねえか!」
俺は思わず叫んだ。ジェイクにはこういう所があった。ある
「むしろ誰が使えるんだよ。その
「本物のサムライだって言ってるだろ?」
「だから、居ねえよそんな奴!」
どこに超音速で飛び出す刀を御せる人間がいるのだろう?その飛び出した刀を敵にぶつけた方が早いんじゃないか。俺は頭を抱えた。どうしようか、俺が考えていると、店の玄関から誰かが入ってきた。
「失礼する」
入ってきたのは奇妙な
「先にいいか?」
「べ、別にいいけどよ」
隣まで来たその
「加速抜刀ユニットはあるか?今日の戦闘でコイツがお釈迦になってしまってな。」
「ある!これ!『伊達&酔狂』!」
ジェイクは興奮した様子で『伊達&酔狂』を指差した。
「なるほど……抜いてみても?」
「もちろん!」
「これは……素晴らしい業物だ。買わせていただこう。装着もここでできるのかね?」
「おう、もちろん!統一規格だからすぐに付けられるぜ。そっちの壊れた方も買い取れるぞ。
ジェイクは胸を張っていった
「あっ!ニイちゃん。悪いけど今日は店じまいだ。すまねえ。今度来た時には安くしとくからよ。二割引き……いや三割引きだ!」
ジェイクは申し訳なさそうに、俺に頭を下げながらいった。
「ああ、わかった。今日は帰るよ……」
もう既に、買い物をする気分ではなくなっていた俺は、おとなしく『
「あーあ、何だったんだ全く」
俺はジェイクの店先に置いてある逆さまのペール缶に座り、懐から『
「蓼食う虫も好き好きってことかねえ」
まさか、あの『伊達&酔狂』を買いにくる客が居るとは。俺が思っているより、世界は広いようだった。
『
紫煙をくゆらせながらその様を見ていると、確かに、量産型の
首から上がロボット犬になっているトレンチコートを着た男、全裸同然の水着の上にスケスケのPVCコートを着てる女、孔雀の羽根をエリマキトカゲの様に首に付け、腕が4本生えてる男か女かもわからんヤツ……
「俺も、腕に
俺は吸い終わったタバコを、足元に置いてあった吸い殻で一杯のコーヒーの空き缶にねじ込み、通りの方に歩き出した。
魂の表現型 デッドコピーたこはち @mizutako8
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