アリとキリギリス 改

@KEN15

アリとキリギリス 改

セミが煩く鳴きアイスなんて1分ももたずに溶けてしまう夏のある日のこと。

アリさん達はスーツをビシッと着て汗水流して働いておりました。

「うちの部署で新たな目標ができて、1人あたり月10個の角砂糖を回収だとよ。今の5個ですらままならないのに」「うちの部署はその個数をカウントするのと、保管方法なんかで技術と口論が絶えないんだよ」「そういえば、今年の寒波は去年より早くに来るんだって」

そこに悠々とチノパンにボーダー柄のポロシャツを着た涼しげなキリギリスさんがやってきました。

「やあやあアリさん達、なんでこんなに暑い中で喪服みたいな服を着て!そろいもそろってこの世の終わりみたいな愚痴合戦をしてるんだい?」

アリさん達はムッとしながら言い返しました。

「やあやあ涼しげなキリギリスさん、僕たちは君と違って『大企業』で働いてるからね、決まり事はたくさんあるけどその分守られてるんだ。それよりこんな時間にプラプラしてるキリギリスさんは大丈夫なのかい?」

キリギリスさんは答えました。

「今の会社は基本的にコアタイムに出社すれば問題ないんだ。それに会議とかもwebを使うから在宅でも問題はないんだよ。最近はお家でも仕事ができるしね。」

アリさんは小馬鹿にした感じでこう言いました。

「今流行のフレックスなんたらとか在宅勤務ってやつかい。あれはどうもダメだよ。だいたい、どうせお家にいたってダラダラしてしまうでしょう。仕事っていうのは朝早くに出社して遅くまでするもんなんだから、僕だって月が始まって1週間だけど残業時間は20時間を超えてるんだ。それだけ働いてるんだ、凄いでしょう。キリギリスさんも同じ事ができるのかい?」

キリギリスさんは少し驚いた様子で答えました。

「アリさん達はそんなに働いてるなんて凄いや!とてもじゃないけど僕には真似できないよ。あっ、そろそろランチタイムだから行かないと!ではでは」

アリさん達は、キリギリスさんがバツが悪くなって逃げ出したんだと思っていました。それから日が暮れるまで、愚痴を言いながらたくさん働きました。


それから月日は流れて寒波が到来しました。

カエルやクマなど大概の動物は冬眠に入り、草木は枯れ、雪がパラパラと降る何ともシーンとした世界になりました。きっとアイスも凍ったままです。

アリさん達はこんな日でも凍えながら働いています。

「結局上半期ノルマが達成できなかったから、今日も働かないと。」「働くったって、こんな一面雪で真っ白の中から角砂糖なんてどうやって探すんだ」「やっぱりウチは人手が足りないんだよ、来年はもっと新卒を取ろう」

そこへブルブル震えながらキリギリスさんがやってきました。

「やあやあアリさん達、こんな寒い中でもご苦労様です。これからあんまりにも寒いんで会社の奴らと鍋でもつつこうかと思ってるんですよ。みなさんもこんな日はパパッと切り上げて鍋にかぎりますよ。」

アリさん達はまたまたムッとしながら答えました。

「キリギリスさんみたいに自由な時間に働けるならいいんですが、うちは無理なんですよ。何せ決まりなんでね。」

キリギリスさんはなるほどと思いました。

「それはそうと、この前アリさん達が言ってた在宅勤務だとダラダラしてしまうって意見。その話をボスにしましたよ、そしたら在宅勤務でもしっかりと何時から何時まで働いたっていう勤怠管理システムを導入してくれました。アリさん達のおかげで問題点に気づけて良かったよ。これでうちも更なる業務改善ができたって話。あ、そろそろ行かないと。」

キリギリスさんはイソイソと去ってしまいました。

その年の寒波で大打撃を受けたのはアリさん達の会社、キリギリスさん達の会社どちらでしょうか。


おしまい。

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