バスケ部の高校生が最後の試合に行く話。
その中で綴られる、思い出。バスケ部に入った理由とか仲間のこととか、補欠だったこととか。
主人公はずっと取り残されていて、ずっと補欠だった。
そして高校生最後の試合。
皮肉のような、救いのような、どちらとも言い切れない感覚がありました。
私の胸に去来するこの感動に名前はありません。
読後感はとても良かった。確かに青春をしていました。
読後に物語を何度も反芻して、言葉を整理しました。
でも並べた言葉の限りを尽くしてもこの作品の良さを語り切れない。
それはつまり、言語化出来ないなにかを表現出来ていると言うことです。
ですからもう、読んでもらうしかない。それ以外に知らせるすべがないんです。名作とはそういうものだと、私は思います。
「特別」な存在なのに、主人公を置いて別の道に進んでしまう友人。
ひとり取り残されながら、そして「平凡」でありながらも自分の選んだ道を進む主人公。
うまくいかない青春時代の苛立ちや幻滅、整理できない感情。
足掻けば足掻くほど、それは痛みになり、一種の馬鹿馬鹿しささえ感じさせる。
だけど、むしろそれこそが「青春」なのではないだろうか。
選んだ道を、誰がどう言おうと、誰からどう思われようと突き進むことが青春であり、それはその人の未来へとつながる。
これは2020年の物語なのだろうかと思わせておいて、紛れもなく2020年の話と気づいたとき、主人公のこれまでの道のりの重さが、胸に刺さる。
進んできた道の小さなゴールが閉ざされた時に、道を違えても寄り添ってくれる友人の存在が暖かい。
人生はこれからだ。
青春という夜が終わっても、未来という朝が来る。
鬱屈する若者への応援歌として読みました。