第263話 太古のエルフと黄金樹(2)


 グレースを送った後、俺はギルドの図書館に寄っていくつか文献を漁り、気がつけばもう日が落ちていた。

(黄金樹、なんてみたこともないし俺にどうにかできるもんなのか?)

 ギルドの図書館にも黄金の樹を記したような文献はひとつもなく、俺としては実際に現地に行って調べてみるしかないと思った。

 グレースの話によれば幻の島「プロイス」はダンジョンだ。ダンジョンの中のリゾート部分のようなものか、もしくはその黄金の樹そのものが「ボス」なのか……。

 文献がないところを見るとこの国の迷宮捜索人たちが発見していないということだろうし……。


「ソールト!」

 うるせぇのがきた。

「なんだよ、タケル」

「お前に聞きたいことがあってさ」

 タケルは相変わらずバカみたいなきらきらした鎧を身につけていた。でも、以前とは違って俺と対等な、そんな距離感だ。

「なんだよ、俺は忙しいんだよ」

「まぁまぁ、つれないな〜」

「で、要件は」

「俺さ、極東に行くことになったんだけど……気をつけといた方が良いことをうちの鑑定士のサブリナっちにおしえてやってくんね?」

 タケルの後ろからひょっこりとサブリナが顔を出す。

「極東へ?」

「はい、極東の国王様のご依頼でダンジョンの外へ出てしまったダンジョンボスを討伐するというものです」

「なるほど、極東は都から離れると未開拓の地が多いといってたしな……。基本的には極東系のダンジョンと同じく注意をしつつ、その場その場の環境をしっかり観察することだ」

 なんて、サブリナに教えながらちょっと羨ましく思う自分もいた。最強の戦士と冒険か……。

 会心したタケルとなら楽しいんだろうか。


「ありがとな〜! ソルト! いってくるぜ!」

「今から行くのかよ」

「おうよ」


 なんだかんだ遅くなっちまったな。

 さっさと帰って準備をしねえと……。


***


「ソルト、なんだか胸騒ぎがするにゃ」

 真夜中、バッグいっぱいに荷物を詰めおわってやっと眠りについた俺をおこしたのはシューだった。

 全身の毛を逆立て、魔力を今にも暴走させそうなほどだ。

「どうした? 侵入者か?」

「違うにゃ、でもなんか変にゃ」

 俺は体を起こしてランプをつける。窓の外を眺めても、静かで長閑な夜だ。コボルトたちも牧場の動物たちも静かに寝入っている。

「シュー、お前が太古のエルフを嫌いだってのはなんとなく察してるけどさ、まぁこれも仕事だし頼むよ」

「んにゃっ」

 シューを引っ掴むと俺は無理やりベッドの中に突っ込んだ。そのまま自分もベッドに入って無理やり眠る。

「そ、ソルト!」

「悪いが明日は早いんだ。お前もだろう? ほら、寝とかないと魔力切れになるぞ」

「にゃ〜〜」


 シューはしばらく文句をたれていたものの、気がつけば丸くなって眠ってしまったようだった。

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S級鑑定士なのにパーティ追放されたので猫耳娘と農業スローライフ! 小狐ミナト@ダンキャン〜10月発売! @kirisaki-onnmu

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