「不要不急」。今まで生きてきた中で一度も使ったことがなかった言葉が当たり前に飛び交う生活が続いた。外に出て誰かに会うことが制限された生活。会わなくてもいいけど会う機会があった人とは本当に会わなくなったし、あまり会っていなかったけど会いたいと思っていた人とは会える時にちゃんと会おうと強く思うようになった。仕事や自分の生活、一人で楽しめることで満たされてしまったことで、誰かに会う余白が少なくなってしまったように個人的には感じていた。
でも、ちょうどこの小説を読み始めた時期に素敵な人や自分と波長があう人と知り合って仲良くなる機会が増えて、「やっぱり人に会うのはいいな」と思うようになった。思い通りにいかないこと、自分と相手の気持ちがすれ違うこと、深く知れば知るほど心が離れていくこと、人と会うことや知り合うことが減った分、人と分かり合えないダメージは大きい。それでも、誰かに期待したり、誰かと通じ合いたいと思わずにはいられない。強くはなれない。だけど諦めたくない。自分が自分らしくいるために、誰かと関わり合っていたい。里瀬のそんな姿に自分を重ね合わせた。
甘すぎず、時に少し後に引くくらいに苦い。上手くいかないことのほうが小説の中でもきっと多い。でも上手くいかないことのすべてが、自分の弱さやふがいなさを肯定してくれているような気持ちになる小説。
新型コロナウイルスのさなかを生きる私たち。
その私たちの葛藤を描いているかのような身近な主人公と、その周辺の人間模様を巧みに描いた実験的な一作です。
人と会えない苦しさとストレス、その中でどんな行動を選択するのか。
私自身に「あなたならどうする?」と問われている気がしました。
誠に考えさせられます。
考えさせられはしますが、ひとつの恋愛物語としてとても楽しくスリリングで、読みながらウキウキしてきます。
一言でいえば「面白い!」。
もう一言いえば「先が楽しみ!」。
連載中の作品ではありますが、作者はあの『炭酸水と犬』『アパートたまゆら』の砂村かいりさん、結末までがっちり楽しませてくれることは保証されています。
だからレビューを書いてしまいました。
さあ、主人公はどうなるのか?
この先の展開やいかに?
期待を込めて☆をたっぷり、三つでは足りません。
そして連載に伴走できる喜びを感じつつ。
面白いよ! さあ、開いてみて!!