その語り口は、誰に向けて?

とにかくひとつなぎに長くつづく文章が独特のリズムがあってそれでいて過不足なく状況がつながってラップを聞いているみたいに止まることなく言葉は流れていきますがしれっとそこにシリアスな状況が挟まれていてふいにぎょっとして、と完全に伝染ってますね。それくらい芯の強い、たくましい文章力でした。
目まぐるしい文章で構成された1話と2話が終わり、最後の3話は一転して落ち着いた通常の文章体で幕を閉じる。振り返るとあの騒々しい語り口は、混乱のさなかにある自分に向けてのようで、だからこそ最後の落ち着いた語り口は、ともかくよかったねと声をかけたくなる安心感があります。
文章の楽しさを改めて知ることのできる、心地よい作品です。

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