エピローグ

 そろそろ、夫が帰ってくる。本土から帰ってくる。


 私は愛情をこめて、彼を迎え入れよう。


 そして告白するのだ。私が娘を殺したことを。


 春菜の死体は、今頃海の底に沈んでいる。いや、もしかすると魚の餌になっているかもしれない。


 どちらでもよい。幸福な結婚生活に水を差す邪魔者など、どうなろうとも構わない。


 私は夫の愛情を独り占めしたい。子供に愛を向けて欲しくない。


 だから殺した。ごくありふれた理由だ。


 きっと夫はわかってくれる。私の気持ちを理解してくれる。


 初めて会った頃の情熱を蘇らせてくれるだろう。


 これから忙しくなる。住民達に怪しまれる前に、宝玉島を出なければならない。


 インターホンが鳴った。どうやら夫が帰宅したようだ。一通り話が済んだら、引っ越しの準備を始めるとしよう。

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宝玉島の殺人~探偵は無力なり~ 沖野唯作 @okinotadatuku

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