第31話 最終話 叶えてくれた

「はい、お疲れさん」


 今日は人の流れが落ち着いた時を見計らって店を閉店した。サンディラは全員をねぎらって特性の飲み物を差し出す。


 それを受け取って、一息を付く。


「今日は疲れた」


 敬輔が肩を回しながら疲労を口にする。


「ゴメンね、リリ。今日は騒がしくなっちゃって」


 ナーニャがそう言って謝罪するが、リリ本人はまるで気にしていなかった。


「気にしないでください。わたくしもメイド服が着られて満足していますし」


 メイド服を着てみたいと言い出したリリは、葵のメイド服を借りる形で店に出た。注文を聞いたり料理を運んだりと楽しそうに働いていた。


 一国の王女を働かせるのはどうなのかと思っていたが、カラン曰く社会を知ることは大切です。と了承がでたので問題なかった。


「やっぱり、カワイイは正義だって実感したなぁ。明らかに流行り始めてるし」


 葵がしみじみとつぶやく。


「だな。今度は学校の制服とかナース服なんてのも良いんじゃないか?」


 勝吾はアイディアを出す。だがそれは、


「それって、いかがわしいお店みたいじゃない?」


 女の子が様々な衣装で客を出迎えるという趣旨は、怪しいものがある。


 子供たちがワイワイと盛り上がっている様子を眺めているサンディラは、優しい眼差しで見つめながらポツリと言葉を漏らした。


「すっかり変わったねぇ」


 その言葉を偶然聞いた心志が尋ねる。


「お店が、ですか?」


「ん? それもあるけど、1番はあの子だよ。最近は随分と元気が無かったから心配してたけど、アンタたちが来てからは良い方向に変わっていった」


 それを聞いても心志はピンと来なかった。


「僕たちは大したことはしてないですよ。むしろ騒がしいくらいで」


 それは本心からの言葉だった。バカなことばかりやっていた気がするので、迷惑をかけたかもしれない。


「ハハハッ! それがいいのさ。あの子には笑う事が必要で、アンタたちがそれを叶えてくれた。感謝してるんだよ」


「そういうもんですかね」


「そういうもんさ」


 心志自身、日本にいた時よりも異世界に来てからの方が充実度は上がっていた。恐らく勝吾、敬輔、葵の3人も同じだろう。


 この先がどうなっているのかはわからない。日本に帰れる日が来るのかもしれないし、来ないかもしれない。


 しかし、どちらにしても自分たちなら問題ない気がした。


(まぁ、考えても仕方ないしな)


 明日も明後日も、彼らの行動は変わらない。



 男子高校生たちは異世界に行っても変わらず楽しくバカをする。

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男子高校生たちは異世界に行っても変わらず楽しくバカをする 笹野谷 天太 @wd-l27

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