地球ミュージアム

水;雨

地球ミュージアム

 かねてから銀河連盟の強硬派は地球を地球人から取り上げ、銀河遺産指定すべきだと主張していた。地球と地球人はひとつでセット、そこに含まれる全生物も例外ではないとの態度をとる他の星も多かったが、地球人の管理能力を疑われる機会が多く重なり、そもそも地球人は地球の代表ではないと、逃げの一手で切り抜けようとするも、地球の環境が大きく変化し、それまでの循環を良しとする一派が巧妙な根回しをしたため、形勢は地球人にとって劣勢になっていった。


 ここにひとりの地球人が現れる。天才ではなく、彼はどこにでもいる、企業に勤める一ゼネラリストだった。彼はマネジメントの観点から、地球を会社と見立て、経営していくべきだと提案した。そこで彼が打ち出したのが、地球ミュージアムである。

 世界遺産事業、エコツアー、ナショナル・トラスト等、統合してエッセンスを抽出し編み出された手法は、結果的にコモン、地球人の誰もが共有財産として地球を守っている自覚を促し、奇跡的に地球は地球人とともにあることができるようになった。さらには、各国の解体を伴わない世界政府の設立と、BI(ベーシックインカム)制度を加速させる。


 しばらくしたのち、ジャーナリストが件のゼネラリストにそのアイデアはどこから?と取材したところ、彼はもともとヒーローものの悪役が大好きで、いつも世界征服を夢見ていた、だから満足している、との回答は、あまりにもアレなため、非公開情報となっているのは公然の秘密である。

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