三十一文字では足りなくて、それより多いと語り尽くせない

二人の女子高生の百合と、その合間に暗闇に潜む怪異を挟んできゅっとまとまった本作。

ちょっと斜に構えた主人公スバルと天真爛漫のミナのやりとりは愛らしくも小気味よく、学生の頃の教室のかしましさを思い出してちょっと懐かしくもあります。

しかし、二人の穏やかな日常は薄氷を踏むような危ういもの。ミナは“見える”人で、おどろおどろしく有害な怪奇現象に度々遭遇してしまいます。長い付き合いのスバルは慣れたもので毎回その対応に奔走するのですが、その為の方法は大変禍々しく、一方のミナは怖い目にあったことをすぐ忘れる体質。ミナに気付かれたら自分も忘れられてしまう、スバルはいつも不安を抱えながら楽しいミナとの日々を送っているのです。この設定が物語に緊張感を与え、物語の行く末が気になって仕方させる本作の見どころです!

また一つ見どころとしましては、短歌も本作では重要な要素となっています。説明下手のミナがスバルに促されて遭遇した怪奇現象を短歌にして語るのですが、これがそれ単品で中々怖い。この短歌でもって日常とホラーに切れ目が入りエピソード全体としてメリハリができて、心地よく読むことができました。

というわけで、つらつら書いてきました本作の魅力は三十一文字でまとめるには至難の業ですし、かといって長文にしてもつまらなくなってしまうでしょう。本作で読むことで得られるスバルやミナの感情や関係の美しさは、やはり言葉にするには難しい素晴らしさです。みなさんもぜひ読んで試してみてください!