何作もある筆致企画作品の中で、色とりどりの四季を描いた作品は、今のところこの作品しか読んだ事はない。不良教師と女子高生と、写真と絵と、葉桜と君。移り変わるのは季節だけではなく、人の心もまた成長する。そんな、ラストはほっこりジーンとする物語でした。
自称不良教師の秋田と、不自由な環境に身を置いている生徒の桜子。ある春の休日、二人は桜の木の下で出会う。秋田は写真、桜子はスケッチ。趣味を通じて静かな交流を重ねていく二人だったが――。 写真とスケッチ。切りとった景色と移りゆく四季。そして『色』の描写がとても印象的。切なくもあたたかい、未来を感じるラストも素敵でした。
写真を撮る秋田と、鉛筆で絵を描く桜子。公園の片隅にある桜の木の下で、ひっそりと同じ時を過ごす二人。思い思いの絵を残そうとする二人を隔ててしまうのは、やはり教師と生徒という関係でした。緻密な四季の情景描写と共に語られる、ままならぬ世界を生きてきた桜子の旅立ちの物語。他の方とは少し違う選び方をしたイメージカラー、その理由が明かされるラストにも注目です。
高校教師と女子高生。誰ですか? 変な想像をしたのは?ここには、そういうべたべたしたものはありません。盛りを過ぎた春の景色と静かな時間、このままでは埋もれるかもしれない豊かな才能がそこはかとなく漂う寂寥感とともに綴られていきます。出会いと別れの季節でもある1年後。どのような結末を迎えるのかはご自身の目で。
自称「不良教師」、秋田葉太。模範的な教師像とは形容されないことを自覚しながらも、それでも教鞭を取り続ける彼と、悩みを抱える春川桜子との、心あたたまる交流が描かれます。小説で色と見せる、語ることの妙が存分に込められています。好きなことを頑張ることを応援してくれる、そんな素敵な短編です。
秋田と桜子の偶然の出会いから始まった、秘密の関係は、衝撃的な告白で壊れたかに見えます。けれど、桜子の人生も、秋田の挑戦も、ここからがスタート!いつか、また逢えるよね……?そう切なく願ったわたくしの、期待以上の結末に胸がすかっとしました。