活動報告:読了作品を語っていく⑨

 おはようございます。ゆあんです。


 早速拝読作品を語っていこうと思います。


 本日はこちらの作品!


 ■えーきち様

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054895719845



 作品を語る前に、まずえーきち様との出会いから少しお話したいと思います。

 えーきち様は本企画の第一回目にご参加頂いたことがきっかけで、交流させて頂いている作家様で、その記念すべき第一発目の作品で、とてもキレのあるアツい作品を披露して下さいました。私は勝手にロックな魂を感じていました。



 ■えーきち様 「明日の黒板」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054887258701



 そして第二回目は、これまたある意味アツい展開の、アオハル真っ盛りなストーリー。「ちくしょう、こんな学生時代を過ごしたかったぜ」と陰キャなら誰もが一度は夢見つつも羨望と気恥ずかしさから思わず唾棄する、そんなどストライクなアオハル物語。太陽のように眩しいキャラクターと、冒頭一発目のビンタが強烈な印象を持った作品でした。


 ■えーきち様 「海が太陽のきらり」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054891855532



 で、今回この過去作品をURLつきでご紹介しましたのは、なんと今回の「葉桜の君」では、過去作品からカメオ出演している点なのです!(しかも結構重要な)



 企画者としてはとても嬉しい出来事でした。私が残した企画が、誰か別の作者様の心に残っているということが、この上ない喜びだったのです。



 さて、そういう人物的な仕掛け以外にも、本作では非常に重要な仕掛けがされていました。

 それは構成です。


 ある相反するキーワードで始まる青春群像劇とでも言いましょうか。それをきっかけに、二つの物語が進行していく。そして最後に一つに収束する時、時空を超えた物語の全容が明らかになるのです。

 その構成をわかりやすく提示するために、冒頭のフレーズが実に効果的に用いられておりました。


 なぜこの子はそう思ったのか。そう思わなくてはならなかったのか。

 そういう求心力のもと、徐々に明らかになる真実によって揺れていく主人公と登場人物。そしてそれらイベントを彩る、過去の登場人物達。

 それらが、この構成によっていい味を引き出しているのです。


 私が拝読した今回の作品群の中で、最も構成に力を入れた作品だと言えると思います。


 これは非常に重要なチャレンジだと考えます。

 あらすじを語る上で、何も「時系列順に語る必要はない」のです。もちろん、順に語っていくのが読み手にとって最も負担が少ないことには違いないでしょうが、しかし「物語を面白く聞かせる」という点で言えば、必ずしもそうではない訳です。


 これはラノベなんかでは当たり前に行われていまして、例えば主人公の過去は後で聞かされるものですし、物語はたいてい、最もキーとなるシーンから始まります。

 要するに、最初の掴みで相手の好奇心を如何にひけるかということが第一なんですよね。

 以前にもこのコーナーで持論を述べた訳ですが、まず第一に読んでもらわないことには、作者の伝えたいことが伝わるはずがありません。そのためには、「読んでみたい、というキャッチ」と、「読みやすさ」、そして「続きを読ませるための引き」が重要です。

 それらを効率的に取り入れるために、構成に工夫を凝らすというのは、非常に有効な手段となり得るとおもいます。


 しかしこれは諸刃の剣でもあります。

 構成が複雑であるほど読み手の負担は増え、内容の理解が難しくなっていきます。

 青春群像劇が多く出回らないのは、それを享受できる読者が多くないからです。

「なぜ青春群像劇の手法でなくてはならないのか」を具体的に説明できなければ、恐らく担当編集の時点で弾かれるでしょう。殆どの物語が主人公の主観で語られることを考えてみれば、それは当然の判断だと思います。


 その目線で見ると、本作では実に成功していると思います。


 まず葉桜の君では、葉太に昔の恋人がいた、という設定があります。葉太の人物像を作り上げる上で、この昔の恋人の影響を色濃くする必要があった場合、どうしてもそのエピソードを書く必要に迫られがちです。

 しかし物語が「今」なのであれば、そのエピソードは「過去」のものとなり、順にストーリーを追っている場合には必ず、その流れを寸断させる必要が出てきてしまう訳です。つまるところ、回想シーンですね。それを地の文に言わせるのか、葉太が直接桜子に語るなどして明かすのかが一つ技法の分かれ目になる所だと思います。

 それで話をえーきち様の作品に戻しますと、この構成を用いることで、「今の葉太には語らせることなく」ストーリーを先に進めることに成功しています。葉太は誰かに語っている(過去の物として整理され、説明用の文章となっている)訳ではなく、その時の心情を素直に吐露している為、より共感が得られやすいものとなっています。


 また本作のキーフレーズとその構成は、より簡素化することで「朝読作品」としても使えるものなのではないかと思いました。普遍的な愛を説いている所も相性が良いと思っています。朝読は読む側が幼い文、シンプルでわかりやすく、その上本質的な内容であることが求めれます。しかし出尽くした本質には面白みが出てこない訳で、そこで文藝などがでてくるのですが、そこはさておき、そういった日常にある当たり前の中の教訓を伝えるのには、構成などで工夫して面白さを出すことが重要になってきます。その点、本作では葉太の心情に十分共感ができる工夫がされているし、視点が変わることで読者の好奇心も獲得できる。キーフレーズは詩のように、読み手の心に鳴り響くのではないでしょうか。



 さて、話が長くなってしまいました。

「何か新しい構成とか試してみたい」

 とう思われる方にはぜひ、参考にしてほしい作品だと思いました。

 また過去策も大変気持ちのいい仕上がりになっているので、これを気に目を読んでみて頂きたいですね。「葉桜の君に」が未読なら、ぜひに「明日の黒板」→「海が太陽のきらり」の順番でお楽しみ下さい。「葉桜の君に」が、より一層楽しくなると思いますよ。



 それでは、また。

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