活動報告:読了作品を語っていく⑧

GWです。始まったと思えば、終わりが見えるのが早いのが連休です。

脳内では早くも「仕事したくない!」と駄々をこね始めている、ゆあんです。

よくありませんね。



さて、本日はダークサイドゆあんに「強烈に刺さった」作品を語りたいと思います。



■枕木きのこ 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054896078545



本企画の中でも随一の黒さを誇る、正真正銘の大人向け作品。刺さる人には超刺さる、文藝作品です。


この作家様の人間の描き方は素晴らしいと思います。真似できない。


まず葉太の人間性の設計が凄い。その葉太から見る世界、葉太がどのように世の中を観察し、どう感じているのかが、全く過装飾でない簡素な情景描写から伝わってきます。


なぜそうも擦れているのか。

なぜそうも他人事でいられるのか。


彼の見る世界には、どこかヒリついていて、それでいてどこか優しさがある。

魂そこにあらずといった感じの、奇妙な感じがあるのです。主人公ではない、誰かの人生を生きているような。


それを表現する素晴らしいフレーズが沢山ありました。

盗みたいフレーズのオンパレードでした。


例えば情景描写を美しくしようと思えば、ソムリエのように巧みなフレーズで着飾ることを想像する人は少なくないでしょう。いかにそれが尊く、ドラマチックなのかを、まるで美女の肢体を指でなでるが如く、相手の繊細な感性に訴える。


ですが本作では、美しいものを賛美するような描写はでてきません。

それでも、その世界は美しいのです。


臭いものには蓋をすると言いますが、人間、やはり醜いものは積極的に見ようとはしません。そういう存在が目の前にあった時、「狂気」だとか、「醜悪」だと枠にはめ、一線を引こうとします。

しかし本作における登場人物のそれは、そういう一線をひくという行為が果たして正しいのか、疑問を抱かせるのです。


そうして読ませていく先に、誰も想像できなかった結末が待ち受けています。

その結末にも、様々な解釈があります。私は恐らくその中でも最悪のパターンを想像し、息を飲みました。

それでいて、4000文字を切るタイトさ。参りました。


あのあらすじから、ここまで深い作品を良く生み出せたな、と思います。

ネタバレから殆どその内容にふれることができないのですが、私は本作品から多くのことを学んだと思います。

人間を作る。それがどういうことなのか。痛烈に指摘された感覚を覚えました。


何より面白かったです。こういう、得てしてどこにでもありそうな、しかし多くの人が見てみぬふりをしてしまいそうな、そういう人間の真相を、さらっと描ける作家に私もなりたいと感じた一作でした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る