「間」の芸術

空気の抜けた風船のような、壮大に何も始まらないコメディ作品です。
独特の空気感というか間の取り方というか、ゆるいというよりヌルい感じの粘度の高さというか。絶妙に低体温な笑い。このユニーク極まる空気感を生み出せる文才に脱帽です。

よく寿命差あるファンタジー設定で、「人間はエルフより寿命が短いから努力する」とかあるじゃないですか。じゃあエルフは努力しないのかというと、本作の主人公アレク君は努力しません。いや木工とかみみっちい自己アピールとかはがんばるけれど、やっぱりやめておこかな……みたいな。
惰性と流れで生きて、小さなことに延々とこだわるその姿は怠惰そのもの。顔は良いが足が遅い、いやすべてにおいて遅い主人公。そんな彼の周りには似た者同士が集まって……みたいな。ダメ人間率が高いダメ空間で展開されるシュールギャグというか。

締まりの無いグダグダ加減で読者がツッコミ役になってしまう、そんな笑いをぜひ体験してみてください。

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